生殖器関係の検診(2005/10/7改定)
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 生殖器関係の癌はその生体的な特徴から,
  1. 進行が早い
  2. 手術に成功しても再発や転移する
  3. 若年層でも発病することがある
  4. 性体験に依存することがある
  5. Hormoneが関係することがある
などの他の癌にない性質が多い。これに対しての効果的な検査は健康診断や人間ドックの検査対象外である場合が多い。

☆ 前立腺腫瘍と肥大
 たとえば,中高年の男性で発生が増えている前立腺腫瘍は,健康診断や人間ドックでは直腸から指を突っ込んで調べているところが多い。米国では前立腺癌は男性の癌の筆頭を占めている。大腸癌同様,食生活の影響が大きいと思われる。
 この腫瘍は今上陛下も手術を受けたことで有名である。陛下の腫瘍は前立腺腫瘍の可能性を調べるPSA検査で発見されたと思う。しかし,この検査は私の勤務先の健康診断ではやっていない。やはり,触診のみである。触診で解るくらいになった前立腺腫瘍はすでに進行癌である可能性が高く,たとえ切除に成功しても,再発・転移の危険に常時晒されるだけでなく,腫瘍の発生部位によっては人工肛門となることもありうる。
 前立腺腫瘍markerのPSA検査については,
    http://www.takeda.co.jp/pharm/jap/seikatu/zg/
を参照されたい。触診で見つからない程度の小さなものでも敏感に反応する。現時点で,血液の異常以外では血液検査で診断できる唯一の癌である。検査は自費であるので,病院によって価格は違うが,中高年の男性ならぜひ毎年受けてもらいたいものである。
 なお,60歳を過ぎたら多くの男性がなるといわれている前立腺肥大は前立腺腫瘍とは別物であり,前立腺肥大が癌に移行する訳ではない。

☆ 乳癌
 女性の乳癌なら,癌の素人である検診医が診断を行う場合もある触診などは信用してはいけない。自分で触診して変だと思ったら,とりあえずmammographyによる検査を受けるのが正しい。この検査については,
    http://www.j-posh.com/manmoQA.htm
に説明が出ている。

☆ 子宮癌
 子宮癌などはすでに内視鏡による検診が普及しているが,恥ずかしさから受診しない人もいる。子宮頚癌は人papilloma virus(乳頭腫:イボのvirus)のある種が原因である場合もあるので,年齢には関係なく性交渉が多い若年層にも発病が増大している。むしろ若年層ほど発病の確率が高くなる。初経後1年以内にこのvirusに感染すると,感染していない人に比べて子宮頚癌になる可能性が24倍にもなるという報告すらある。
 世界で年間に25万人が死亡し,女性の癌死因の第2位である。日本でも年間約七千人が子宮頸癌と分かり,約2,400人が死んでいる。高がイボで死ぬなんてばかばかしい限りだが,イボが出来た場所が硬い足の皮膚の上とは異なるのだから仕方がない。
 100種以上のイボのvirusの中で,15種が癌を引き起こす。そのうち16,18,35,52,58番の型のvirusが危険である。


情報はたくさんあるが,
    http://www.tilolu.com/std/std-2-2.htm
などがよいであろう。
 最近このvirusに対するvaccine(ワクチン)が発表された。16,18番の型に有効だそうである。


 とにかく,仕事や学業が忙しいなどと億劫がらずに,自分で情報を集めて最適な検査を受けることを勧める。すべては命があってからのことである。


子宮頸がんは世界で年間に25万人が死亡し、女性のがん死因の第2位。近年、米国と英国に本社を置く製薬会社が相次いで予防ワクチンを開発、日本でも臨床試験が始まっている。(村島有紀)

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 子宮頸がんは、子宮の入り口にできるがんで、一般的には30、40代に多いが、日本では1990年代以降、20代から30代の女性に急増。年間約7000人が新たに子宮頸がんと診断され、約2400人が亡くなっている。

 原因は、性交渉を通じて感染するヒトパピローマウイルス(HPV)で、感染しても無症状のために、妊娠を機に発覚するケースが多い。早期発見すれば、ほぼ治癒できるため、国は平成16年から、検診の対象年齢を20歳以上に引き下げ、定期的な検診を呼びかけている。

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  予防医療に関心が高まるなか、開発されたのが、HPVの感染を防ぐワクチンだ。HPVは、100種類以上の型があるが、子宮頸がんに関連するのは、15の 型に絞られる。そのうち16、18、33、52、58型が高危険型に分類され、欧米で7割の子宮頸がんが16、18型に起因する。日本人には比較的52、 58型が多いが、16、18型がやはり全体の6割を占める。

 この16、18型の感染を防止するのが、米国の製薬会社「メルク」の子宮頸がんワクチン「ガーダシル」と、英国のグラクソ・スミスクライン(GSC)の「サーバリックス」だ。

 「ガーダシル」は、16、18型のほか、尖圭(せんけい)コンジローム(いぼ)の原因となる型にも効果があり、昨年以降、米、メキシコ、豪州など70以上の国と地域で承認された。

 一方、「サーバリックス」は、アジュバントと呼ばれる免疫増強剤が配合され、16、18型のほか、がんの原因となる31と45型にも効果が認められた。今年5月、豪州で承認を受け、欧州と米国でも承認を待つ。