雑誌「Interface」の「新談話室」

 CopyRight 2005 Dr.YIKAI

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 以下の内容は,CQ出版から刊行されている雑誌「Interface」に「新談話室」として2005年から新たに書いたものを再掲したものである。
 なお,雑誌に連載した原文でカタカナ語を使っている部分の技術用語は基本的に英文表記に改めた。さらに,明らかな誤字なども改めた。註と強調はこのHTML fileで加えたものであり,原文にはない。
 このsiteに記事を転載するに当たっては,CQ出版のInterface編集部から快諾を得たので,ここに謝意を表する。なお,雑誌掲載時に種々の都合で内容の削除および改変が行われているが,ここでは原稿文を元に掲載してある。さらに,雑誌のillustrationには著作権があるので,Dr.YIKAIが用意した図版以外は掲載していない。
2007年6月12日 Dr.YIKAI
2005年4月号 p186 歴史は繰り返すか
2005年5月号 p128 Softwareのbusiness model
2005年6月号 p151 Computerに偸られる
2005年7月号 p135 Internet電話はホリエモンの救世主になるか
2005年8月号 p175 本当は怖いdigital devide
2005年9月号 p195 新談話室 ケータイの進化

2005年4月号 歴史は繰り返すか

  ドコモの第三世代の携帯電話のOSには,第二世代まで利用されていたITRONなどを使わずに,携帯電話用OSのSymbianやLinuxが採用されている。
 その主な理由は,携帯電話でのWeb閲覧機能の拡充やJavaなどの利用に際し,現在のITRONでは能力不足というか,標準化されていない部分を各社で開発していたのでは時間と人件費が嵩むからである。もちろんどのようなOSを利用していても,各社独自に機能を拡充していたのでは,既成の技術や資源を幅広く利用することはできない。
 LinuxはGPLの基準で公開されたOSであるが,Symbian OSは親会社にNokiaやソニーの関連会社を持つSymbian社のれっきとした商品である。世界的には多く使われているSymbian OSを,ソニー以外のわが国の携帯電話機makerも採用し始めたということは,LinuxですらITRONよりはましであっても,汎用OSであるために,携帯電話機用の拡張や変更が不可避であるからである。Symbian OSはもともとARM上で動いていたEPOCというPDA用のOSを基礎として作成されたので,携帯機器用に特化されている。
 なお,KDDIのauはQualcomm社のREX OSを使っていて,当面変更する予定はないということである。
 話題を同じ携帯機器のPDAの世界に拡げると,米国国内ではあいかわらずPalm OSとWindowsが首位を争っているが,世界的に見ると携帯電話を含めた携帯機器でのOSの新規採用数は,2004年末にはSymbian OS,Windows,Palm OSの順になったようである。2004年の統計数値が発表されればSymbian OSが過半数を占めているかもしれない。
 これらの状況から見て,携帯機器のOSの採用に関しては,利用者の立場はあまり重要ではないようだ。利用者はOSの種類ではなく,価格と利便性で機種を選択する。現在携帯機器のOSの選択権は,PDAや携帯電話の提供側にあるのである。
 さらにパソコンに目を向けると,最近東大や東京女子大などのいくつかの有力大学で,計算機室などで学生が使うパソコンにMacの採用が増えていると聞く。これは,MacのOS XがUnixの技術の上に作成されているので,Web siteの作成や専門の研究にこれらの大学が利用しているUnix系のOSとの相性がよいからである。しかも学生が必要とするapplicationも,MacならLinuxなどより完備していて,Windowsとほぼ同じ感覚で使えるからである。
 医家やdesigner向けに特化した感があったMacもOS Xの登場で,計算機関係の専門家やその卵達が使う高性能パソコンという地歩を占めつつある。すなわち携帯機器と違い,OSがパソコンの選択基準となっている。
 ところで,今のPDAほどの能力もない小型計算機やミニコンが,空調の効いた部屋に鎮座していた1960年代から70年代でも,OSの選択は重要な課題であった。OSをどれにするかといういうことは,見た目にはprogram言語を選ぶよりも華やかではなかったが,ようやく台頭しつつあったUNIX+Cという組み合わせがwork stationという名で定着するまで,makerだけでなくuserも頭を悩ませた。
 それは,計算機を買うとそこで使えるOSが自動的に決まってしまったからであった。
この事情は,現在のIBM型パソコンとは異なり,PDAや携帯電話と同じである。計算機が出現して以来,IBM型のパソコンが例外なのであり,通常はOSは機械と一体化して供給されるものである。
 法律の世界でも同じようなことがある。民法第87条の主物と従物の関係である。さらに捜すと,マンションなどの区分所有を決めている「建物の区分所有等に関する法律」の第22条には,建物の専有部分と敷地使用権の一体化(ばらばらに処分できないこと)を唱っている。すなわち,計算機とOSの関係は,マンションとその敷地の関係と同じようだと解釈できる。これが世の中の一般的な物事の処理方法なのであろう。
 実際に,IBM型のパソコンを別にすれば,ほとんどの計算機搭載機器のOSはその機器専用に拡張・整備されている。携帯電話もその路を辿りつつあると考えられる。その意味では,IBM型のパソコンにUNIX likeなOSを載せるという発想は,50年に満たないOSの歴史上画期的な発想である。
 OSによらない携帯電話のapplicationを開発して,好みのOSで動かすなどということは,今は情報公開がほとんどなされていない携帯電話では不可能である(註)。PDAでは趣味としてOSのLinux化などが行われているし,積極的にLinuxを採用している機種もある。しかし,携帯電話がPDAや携帯して使うnotebook型パソコンに取って代わる時がくると,やはりパソコンと同じように好きなOSとapplicationを載せてみたい気がする。
 さて,携帯電話のお後の計算機組み込み機器を考えてみる。究極の組み込みchipであるIC tagも,日立から0.4mm角で10円を切るという製品が出され,すべての品物にIC tagが付く時代が訪れようとしている。IC tagにもそのうちOSとしてITRONのような軽いものから,だんだん重たいOSが搭載されていくかも知れない。
 IC tagでは,ある技術が一旦採用されると,外部とのintertfaceやdata伝送protocolが社会全体で固定されるので,携帯機器でこれらの仕様を握ったところが有利になるのは間違いない。IC tagに使うOSについては,最初は一体化の原則が適用されるであろう。将来,IC tagに好きなOSを載せることを議論する時代まで,筆者の寿命が続くことを願いたい。

註:
 Symbian OS自体は仕様が公開されているので,誰でもその上で動くprogramを開発できる。もっともこれはwormやvirusの開発も出来るということに通じる。


2005年5月号 Softwareのbusiness model

 かつて一世を風靡した一太郎のジャストsystemが,操作画面上のiconについて松下電器に特許権を主張され,一審で全面敗訴の判決を受けた。ジャストsystem側としては当然ながら控訴することになった。
 一太郎の画面が松下の特許そのものに触れているかどうかについて,ここでは判らない。しかし,ジャストsystemはかつて他社が商標登録申請して発売しているsoftwareの商標を自社のsoftwareに付けて発売し,争いになったことがある。このときは,商標が登録されてから和解が成立するまで,同社は一時的にsoftwareの名称を変更して販売していた。
 特許や商標は,その技術内容や名称を使って他人が商品を販売し利益を上げる行為に対して差し止めることができる。当然ながら,他人に使わせるときは応分の利益の分与を求めることができる。これ自体は対象がhardwareであろうがsoftwareであろうが問題はない。
 ところで,この一太郎のbusiness modelであるが,一定間隔ごとに新しい機能を搭載し,動作が重たくなった新製品を旧製品のcustomerに販売することで利益を確保するという形態である。このmodelは,市場が拡大しているときは非常に儲かる方法であるが,一旦市場が飽和してしまうと,customerがなかなか新製品に手を出さないためか,利益の確保が難しくなる,20世紀型のbusiness modelである。
 OSを販売してこの業界で世界一の大企業になった会社も,同じ形態のbusiness modelではあるが,さらにえげつない方法を採用している。すなわち,市場に出まわるhardwareに,契約という形で別途の選択肢を抑える,という半ば強制的なやりかたでOSやsoftwareを付けて販売している。
 このbusiness modelでは,customerが「以前のパソコンに搭載されていたsoftwareがまだ十分使えるので,新しいパソコンに移したい。」と考えても,契約で同一のsoftwareの対価の支払を再度要求される,関所型のbusiness modelである。利益の確保は容易になるが,多くのcustomerはすでに持っている商品の対価を二重払いさせられることになり,日本でgasoline税に対しその消費税を払わされている状況と似ている。
 さて,関所を設ける山賊型が採用できない,ジャストsystem型のsoftware企業が商売を続けられるbusiness modelとは,どのようなものであろうか。すでにIBMは従来の路線を大幅に変更し,solution提供businessを展開している。OSの多くの部分がfreeであるLinuxを利用したbusinessは,このsolution型のbusiness modelしか利益が出ないようである。
 ジャストsystem型の企業は,企業の基盤を研究開発に置いて来たところが多いので,個別顧客を相手する部隊を有していたIBMとは異なり,急には方向転換できない。
 じつはワープロを多用するcustomer間でいちばん評価が高いのは,一太郎本体ではなくATOKという日本語入力softwareである。完成品のパソコンを買うと半ば強制的に販売されるOSに付属している,IMEという日本語入力softwareと比べて一日の長がある。
 筆者もATOKの更新をするためにジャストsystemに何回もお金を支払っている。ワープロ本体や描画・表計算softwareを一体化した商品などには興味が湧かない。汎用処理ならOpenOffice.org,年賀状には筆まめ,専門関係のpdf作成にはTeXなどを必要に応じて使い分けている。そのどれにもOS付属のIMEなどは使わずにATOKを利用している。ということは,ATOKはbusiness modelとして成り立っているのである。このことはジャストsystemは当然理解していると思われるが,ATOKだけでは企業規模を維持するためには不十分なのであろう。
 本音を言うと,BTRONの実装である「超漢字」が持つ程度の漢字処理機能を一太郎とATOKには持って欲しい。そうすれば購入意欲も湧くし,他人の特許に触れる機能が付いていないワープロであっても,なにも問題はない。この業界はNo.1になるbusiness modelが描けなければ,only oneにならなくては生きていけない
 韓国やAustraliaからは,日英中韓が自由に使えるワープロがいくつか発売されている。しかも試用はタダという売り込みが行われている。このように考えると,いろいろなOS下で日英中韓が自由に打ち込める入力softwareはそれ自体が商売になるし,business modelとしてはその辞書fileの管理と更新は十分成り立つと思われる。
 ある程度の大きさの企業となってしまったジャストsystemには,今回の特許紛争は避けられない面もあったと思われるが,同じようなbusiness modelで営業しているsoftware企業は,Internetが使える状況下での21世紀型business modelを模索してはどうであろうか。


2005年6月号 Computerに偸られる

 昨年,山の手線のterminal駅にある私鉄の切符の自動発券機に6千円を騙し偸られた。この日はこの私鉄の沿線にある大学で開催される研究会に出席し,引き続き同じmemberで開かれる忘年会に顔を出す予定であった。

 そのとき筆者は小銭を切らしていて,1万円札が1枚しかなかった。地下の改札の手前に並んでいる券売機はほとんどが千円札しか使えず,端に設置してある定期券発行機兼用の券売機だけが1万円札にも対応していた。そこで,1万円札を入れて目的地までの金額buttonを押した。
 9千何がしかのお釣りが出て来るはずであった。小銭は正しく出て来た。ところが,千円札が纏まって9枚出て来くるはずであるのに,掴んで引き抜こうとしたら何か手ざわりが薄い。数えると3枚しかない
 すぐ,駅員の呼び出しbuttonを押して状況を言うと,機械の中に千円札は残ってはいないと言う。機械のcounterは9枚出たことになっている,と主張する。朝からの入出金を清算出来ると言うので,念のため,5分ほどかけて機械を回してもらったが,合っていると言う。駅員はついには,筆者がお釣りの中から6枚抜いたか,隣の人に持っていかれたのではないか,と疑いだした。結局は,computer処理である機械が絶対正しいと言われ,6千円は泣き寝入りさせられた。筆者はcameraで現場の映像を記録していないし,別の証拠も出せない以上どうしようもない。
 この日は忘年会があって危ないので,銀行のcardは家に置いて来た。機械にお金を騙し偸られ,費用を人に借りてまで忘年会に出る気はないので,研究会は自動的に欠席することになった。券売機から出て来た切符を現金に戻して貰い,大学へは欠席する旨を電話してすごすごと自宅に帰った。
 この騒ぎで以下の三つのことが言える。

  1) この私鉄は商売が下手である。
  2) この駅員は機械を信用し過ぎている。
  3) この私鉄はsystemの運用が下手である。

 商売の件は,筆者を含めてこの雑誌の読者の多くに当てはまると思われる。商売上手な難波の商人なら,何がしかの安価なお土産(現金ではない)を筆者に渡して,この事件を気にせずに今後もご利用を,と相手を引き取らせるであろう。そうすると私怨とも取れるこの一文が書かれることはない。
 機械を信用している件は,日本人は「ど壷に嵌まっている。」と言える。機械がやれることは,その機械を考えた人間が想定した範囲でしかない,ということを完全に忘れている。
 さて,この件で実際に起る可能性が高かった機械の動きを,組み込みsystemの自動機を数多く手がけて来た筆者の経験から考えてみよう。

  1) 筆者の前に,やはり万札でお釣りが必要な定期券などの切符を購入した人がいた。そのときのお釣りに,なぜか6千円余計に返却された。
    これはprogramのbugなどで,特定の状態のときに発生したものと思われる。
  2) 実際には払えないわけであるから,千円札を払い出したcounterの値はminusのまま保持され,次のカモを待った。
  3) 筆者が1万円札を入れたものだから,落語の時蕎麦(注1)よろしく,お釣りの勘定を6枚出たところから始めた。
  4) 二人分で一つのことを処理したのである。記録には私に9枚の千円札を払いだしたことになるから,何も矛盾したdataは機械には残っていない。

 ところでsystemであるが,機械はどんなに頑張ってもかならず事故を起こす。そのときに,最終的に事件にならないようにするのはsystemである。しかし,多くの日本人はsystemも機械と同じように運営しようとする。すなわち,組織の硬直化であり,竹の塚のような例(注2)はsystem疲労という現象である。
 日本ではsystemを構築するときに,機械や個人に信頼を置き,機械や扱う人間の信頼度を上げることに熱中する。さらに,systemが完成した時点ではかなりのものであっても,扱う人間すべてが悪意を持たないという仮定の下に成り立っている。また,予想外の事態に対して,抜本的に変更するのは非常にむつかしい。小手先の運用で誤魔化そうとする。

 以上の議論は自動販売機でなくても,社会保障・医療や教育・税制・国防などすべてに通じる。
 実際に世の中は,誰の目にも明確で安定したsystemが存在しないと,中国社会のように人治主義になってしまう。人治主義自体も一種のsystemであり,対応が早くかつ融通無碍である点が勝れている。しかし,汚職が蔓延し易いし,外国人には「対応する人によって言うことが変る」と批難される。
 欧州からの移民の国である米国は,古代Romeの伝統を受け継いでいるようで,憲法すらどんどん修正し,systemを新しい状況に合わせて頻繁に変更する。古いまま理解していると戸惑ったり不利益を被る。契約時には,systemをどこで固定するかを文書で明確に取り決めないと,Asia人にとっては非情な扱いを受けることも多い。

 日本の多くのsystemは,精緻かつ変更が少ないため,その中で利権に安住するする人にとっては暮らしやすいが,状況の変化について行けなくなり,system疲労に陥り易い。
 Systemは民族によってそのdefaultの形態が決まってしまう。その中で,自国の多くの人々が不満を持たないように,さらに世界の国とのやりとりに支障がないような形に修正あるいは再構築したりできなければ,よいsystemとは言えない。
 今は,このような考えでsystemを構築できる人間を育てるsystemが必要となる時代である。日本は,弥生時代のようにもっと渡来人を受け入れて,柔軟なsystemを構築できるように日本人の意識改革をするのはどうであろうか。

注1:http://www.sobagura.com/tokisoba.html

注2:2005年3月東武伊勢崎線の竹ノ塚駅南側の警手のいる踏切で,遮断機を不用意に上げたために,渡ろうとした主婦らがはねられ二人が死亡した事故。


2005年7月号 Internet電話はホリエモンの救世主になるか

 ホリエモンことlivedoorの堀江貴文社長はニッポン放送の買収劇のみではなく,それにまつわる言動が原因で,政界や経済界の既成の権威や既得権者たちから総スカンを食っている。この4月にはフジTV側と和解することになり,一千億円以上の資金を手に入れた。ここでは,何かと話題のlivedoorが取り組みつつある別の事業にも関心を向けてみたい。
 それは,SkypeというP2P(Peer to Peer)技術によるinternet電話である。Skypeは既得権者から悪名を奉られたWinnyと同じく,音声dataの転送用serverが不要なP2P技術を使って,user間で音声packetの直接伝送を行っている。
 NTTや通常のproviderが提供するIP電話は,基本的には自社IP網を経由することで接続や音声packetの伝送を行っている。この方式はIP中継serverを経由することで,代金の徴収などが容易になるbusiness modelである。

 これら既成のIP電話には050で始まる電話番号を割り振ることが決まっている。東京芸術大学ではVPN(Virtual Private Network)で結んだ全施設で個人に050の番号を割り当て,内線・外線ともに使うことにしたそうである。
 米国IDC社の調査によると,AT&TやVonageなど種々の事業者が米国で提供するVoIP(Voice over Internet Protocol)のuserは2005年末に300万人に,2009年末には2700万人まで増加する,とのことである。通常の固定電話はIP電話の普及と携帯電話によって挟み撃ちされ,PB(ポケットベル)のように将来消え去る運命にある。
 Skypeの無料softwareは,2003年の8月にβ版(Ver 1.0は2004年7月から)のdown loadが始まり,2005年4月までで約1億本がdown loadされている。現在で常時200万人を越えるon line参加者数を見ると,パソコンを起動すると同時にlog inしている人が多いことがわかる。

 専用のIP網を使わずに,広くinternetを使ったSkypeの実際の使い勝手はどうであろうか。筆者が使った経験では,「音声は明瞭」,「音質はダントツで携帯電話やパソコン上のvoice chatは足元にも及ばず,固定電話と遜色ない」,「相手の呼び出しは意外とはやい」,「音声の途切れや遅れも通常のIP電話と変らないか,むしろ少ない」といったところである。
 これらは,音声dataの伝送にserverを経由しないP2P技術の特長である。Server経由のIP電話は,接続者が増えると遅くなったり途切れたりする。一千万円を越える投資話で何かと噂が飛んでいる近未来通信の8回線IP電話serverは,user800回線が上限となっている。Server 1回線で100人までが同時service可能ということである。
 Serverの技術や規模でいろいろと差があるとしても,user一人あたり1万円以上も投資していたのでは,VPNを含めて専用IP網を利用したIP電話は安くはならない。事実,近未来通信では個人で月3,800円,法人では9,800円もの基本料金を支払わなければならない(注1)。

 Providerへの接続料と回線の使用料さえ払ってあれば,internet内でのSkype同士の通話は,初期費用にhead setかmicrophoneの購入のための1〜3千円程度の支出すること以外は,加入料も基本料金も通話料も不要である。
 IP電話各社は,この中継局のowner商法を展開している近未来通信を除けば,基本料金および他のIP電話や固定電話・携帯電話への接続料で経営を成り立たせている。
 Skypeのbusiness modelも同じで,基本料金がないだけで,外部の電話網とのserver経由の接続料SkypeOutで経営を成り立たせている。ただ,自社IP網を維持する費用がないだけに,SkypeOutがIP電話各社より安くできるのは必然である。

 お金がかからずに音質がよければ,爆発的に普及するのは当たり前だが,現在いくつかの点でIP電話に比べて不利である。
 Internet電話はIP網に直接つながってはいないので,パソコンなどSkype softwareが走る機器経由でないと使えない。さらに,050で始まる番号の取得が困難,というか認可の可能性がほとんどない。このため,Skypeの外部から接続するSkypeInが困難である。
 Skypeの中だけですべてがまかなえるなら,IP電話機のようなSkype電話機が開発されて回線に直接つながるようになれば,通常の固定電話やIP電話と便利さは変らなくなる。

 050番号の問題も,昔から電話機の数字に英字が併記されている国では問題ない。外部からの接続をしなければ,自分が気に入った英数字をSkypeのIDとして使用すればよいだけである。多分,数字にこだわるのは日本人だけであろう。
 ところでlivedoorは,通常のIP電話事業のほかに逸早くこのSkypeの日本での普及を図って,SkypeOut料金の分け前に預かろうとしている。ホリエモンのSkype IDですらlivedoor Skypeのtop pageで公開されている。
 Winnyの作者が,世界的なfile転送P2P softwareのKaZaAと同じことを狙わずに,KaZaAを引き継いでSkypeを企業化したような行動をしていたら,Luxembourg発ではなく,日本発の面白いbusinessが展開できたと思う。
 しかし,著作権法違反ほう助という法律解釈には問題が多い容疑で,日本の既得権層は,この作者の将来と日本からP2P電話businessを世界に発信するという可能性を葬り去った。(注2)
 ホリエモンの今回の株式を巡る行動も,日本では同じように既得権層の発想によって押え込まれるであろう。その際に,彼が欧州発のP2P技術によるinternet電話で蘇生するとしたら,皮肉と言わずに何と言えばよいのかわからない。

注1: 2010年5月23日
 その後,近未来通信はserverを設置・稼働した実績はほとんどなく,完全に架空事業のネズミ講であったことが分かり,報道と官憲の手入れにより2006年12月に倒産した。以下の文は当時近未来通信のserver事業に退職金など5,000万円以上注ぎ込んでいた知人に養豚家が送ったmailである。この知人は,私が近未来通信はmonky businessであるということを忠告し,早めに手を引くことを勧めたにもかかわらず,最終的には投資額すべてを失い,以後音信不通である。
 それまでの配当金には高額の税金が課せられており,産業界でかなり長く働き,高度な知識を持ち合わせていたにも拘らず,自分のお金に税金を払うという気の毒な結果に終わってしまった。 

 確定申告ですが,近未来通信のようなマルチまがいの商売への投資は,青色申告でしたほうがよいと思います。そうすれば,現在の黒字を将来の赤字で埋めることができます。基本的には「誰でも入れる入院保険」と同じで,先にもらったもの勝ちです。

 なお,この商売の将来をいろいろと調べましたが,近未来通信自体はつぶれない構造になっているようですが,設備の利用率が今後数年以内に急速に下がる可能性があります。
 それはSkypeなどの技術がすべてのIP電話を覆いつくすからです。Skypeはパソコンがないと使えないと言いますが,国際電話をかけるような状態のときは,だいたいパソコンが使える環境です。またSkype専用のパソコンも,数万円で用意できます。
 現在投資しておられる分は早いうちに回収できると思いますので,今後の追加投資はよくご検討なさるほうがよいかと思います。すこし,計算をして見ます。

 初期投資:2,100,000(加盟金)+9,927,400(設備)=11,327,400
 初期投資の償却:11,327,400÷60(5 年)=188,790
 月間総経費:188,790+290,000(維持費)=478,790

 5年償却で最低これだけの収入が必要です。3年償却だと604,650円になります。この収入を出す売上は,478,790÷0.2(分配率)=2,393,950です。最大の800回線のuserが付いたとして,各回線当り月2,922円の売上が必要です。
 Userは個人で3,800円,企業で9,800円の固定契約料を支払いますので,その意味では売上の実現は可能なのですが,userは外部への通話料以外は完全に無料なSkypeなどが気入ればいつでもいなくなるので,この数字はあと一年位しか期待できないと思います。

 最後に近未来通信が使っているserverがYahoo auctionで売りに出たそうですが,230,000円の希望価格に対して 140,000円しか値段が付かなかったそうです。Severは日進月歩ですので,2年くらい使ったserverはその位の価値かもしれません。初期費用は少々高すぎるように思えます。はたしてその価値のものが用意されているのかどうか不明です。Pool しておいた初期投資金から分配金や多大な広告費と営業費用を出している可能性があります。
 ちなみに,severはhp製などではなくて,台湾製なら1/2〜1/8位の費用で入手できるそうです。先日台湾でそういうserver venderを訪問して来ました。いま急速に価格破壊が進んでいます。
 なお,TVfoneはこのuser価格ではinternetでの同様なserviceに勝てないと思います。

2005/3/6

Dr. YIKAI Kunio
 以下近未来通信のsiteから誰かが調べた金額 list のcopyです。

☆ 設備投資

専用回線設営調整費 20,000 
Router(専用線接続装置) 300,000 
PC(CPU/Network Bord) 800,000 
OS(English Version) 48,000 
Super Net Original Universal Port 3,800,000 
Voice Support System 650,000 
Trunkpack-VOIP Voice Compression 1,750,000 
Network Instrument TA・TA/DSU HUB 設備費 900,000 
Install fee(Machine) 150,000 
System setting and setting up charging software 250,000 
LAN環境構築費 60,000 
電話回線設営工事費 60.000 
合  計 8,788,000

加入上限回線数 800 
売上額 国内 AP user のみの月額売上上限値
月額固定収入 (個人 3,800,法人 9,800,各 50%)5,440,000
Station 還元分
接続料還元分収益(20%,800 回線 100% 稼働時の毎月還元分)1,088,000

Station running cost
専用線月額使用料金 160,000
NTT 発着信側基本料金 20,000
設備保守費用 80,000
設備管理費  30,000
支出合計 290,000

月接続収支 1,088,000−290,

注2:
 この裁判は,2006年12月京都地裁では検察側の無理なこじつけを認め,罰金150万円の有罪判決となったが,2009年10月大阪高裁で無罪となった。なお,検察側は最高裁に上告している。学術研究の結果に対し,著作権法違反幇助のような微罪で逮捕され東大助手の職を失ったWinnyの作者にとっては,ほとんど権力による強盗や強姦の被害に遭ったようなものであろう。


2005年8月号 本当は怖いdigital divide

 6月号の本欄で,鉄道会社のsystem疲労について私的な怨恨があることを述べたが,とうとう本当にsystem疲労の現実に直面することになってしまった。JR西日本福知山線脱線転覆事故の犠牲者の方々のご冥福を祈るとともに,被害者への救済がsystem障害によってなおざりにされないよう見守りたい。

 ところで,マイコン内蔵の電子機器やパソコンを使うことができる人々と,そのような機械に興味がなかったり,操作に恐怖を覚える人々の間に起きる現象をdigital divideと呼んで久しい。昔は機器の操作が苦手な人を機械音痴とかメカ音痴と言っていた。
 人類は19世紀半ばまでは,二十四節気など自然の運行に合わせて,のんびりと暮らしていた。ところが,機械産業の発達により,正確な時計と高速移動手段を安価に入手し,20世紀はどんどんと目まぐるしく生きなければならなくなった。多分21世紀は,高速かつ大量な情報の洪水の中で,狂ったように生きる時代になるのではなかろうか。
 この流れは一度乗っかると,降りることが怖くなる。昔は路面電車に飛び乗ったり,途中で飛び降りたりしたが,時速120kmで疾走する通勤電車から飛び降りる勇気はだれもないし,もしやったとしても,プロのstuntmanでも命が危ない。

 Windows95が出るまでの2,400bpsのMODEMでinternetにつながっていた時代では,いつでもこの世界からさよならすることができた。しかし今のように,100Mbpsの光が当たり前になると,internetを通じていろいろなことを処理しているため,もう飛び降りる勇気は湧かない
 それどころか,一度降りてしまうと,もう再び乗ることが出来なくなるのではないかという,恐怖が先立ち,手放せなくなってしまう。
 パソコン,internet,マイコン制御の家電製品・自動車などが生活の隅々に浸透してしまい,もはや代替手段すら提供されなくなっているものも多い。
 Internetを利用した最新のserviceは,従来の同じような手段に比べて,安価・高速・安定で手間がかからないことが特徴である。パソコンへの投資と高速回線の月額費用は,従来のいろいろなservice用の機器の購入費用と月額料金の合計を上回ることはほとんどない。

 ただ,internetを利用したserviceは,digital divideがいちばんはっきりと出る分野でもある。手段を用意しても使えないのである。使っても,いらない機能が貼りついたまま使うのである。
 先日も,筆者が管理を手伝っているhome pageに,新規pageの追加希望があり,原稿をmailで送ってきた人がいる。数行の文章と写真一点のpageだったはずなのが,何と17MBもの大きさのmailが到着した。
 筆者は,全画面をbit mapで作成しても,もうすこし小さいはずだと,首を傾げた。Page用の写真は,100kB以下には圧縮できるはずであるが,デジカメで撮ったままの高解像度画像でも変だと思った。Wormが付いている可能性も疑って慎重になり,OpenOffice.orgで開けた。
 開けて見ると,写真はbit mapになっていて,それが生で入っていた。パソコンにpreinstallされている某社のワープロで作成したpageのfileを,HTML出力もせずにそのまま添付して送ってきたのである。
 多分某社は,それが操作上いちばん親切だということで,多少のdigital divideがある多くの人が使いやすいようにという,おせっかいな気持ちでそのようにdefault設定したのであろう。
 さらに文字codeはUTF-8だったので,home pageで使っているencodeに直す手間もかかった。

 初歩のdigital divideが起きないように,文部科学省は義務教育の段階からパソコンなどの操作を教えることにした。
 だが,本当に怖いのは,この例のように操作できると思っている人達の間のdigital divideなのではなかろうか。
 情報機器の操作教育は,自転車の乗り方と自転車で街を走行するときの注意事項を教えるのと同じ水準である。学校ではパソコンなどの道具を整備するだけで,放課後に地域のvolunteerでも募って,ある程度の水準までのdigital divideの解消に勤めないと,教員の負担が増えるだけである。そのほうが,将来の国を担う人材が育つと思うがどうであろうか。
 急ぎのためか,前方車両に乗り合わせて事故に遭った方々は,無念であろうが,嫌な言い方をすれば,今時の危ない電車の乗り方を知らなかった,となる。乗車術divideである。
 Digital divideへの恐怖から,ただ高速で走り続けると,人は思考を失う。焦ってdigital化に乗り急ぐ必要はないと思う。ただ,従来のserviceに比べて,digital化されたものは,あまりにも便利かつ安価である。これは事実ではあるが,難点でもある。


2005年9月号 新談話室 ケータイの進化

 「ケータイ」という言葉を携帯電話の意味で使っている人は,まだ多いと思う。しかし今は,camera付きが常識となり,自動販売機にも使えたり,定期券や入場ticketの代りになったり,mp3 playerに使ったり,radioやTV受信機にできるようになってしまった。
 ケータイの試験市場と言われている韓国では,すでに電話機能付携帯情報機器(あえて端末とは言わない)というべき状況に突入している。サムソンの700万画素camera付きケータイ,LG電子の3D game付きケータイ,SKテレテックのdigital衛星TV放送受信ケータイ,などどれも6〜10万円という値段の商品が目白押しで発表されている。

 日本では,share獲得のための小売り店へのback margineを利用して,ケータイは原価を割った値段で販売されている。Back mergine分は,携帯電話の月額基本料や通話料で回収するという,歪んだbusiness model(注1)である。
 ところが,若者の中にはケータイを買うと,紛失などの理由を述べたてて,即時に解約し,電話機能以外の機能を使う者が続出し,back margine分が回収できなくなった携帯各社は頭を痛めている。その対策として,電話番号がないと付加機能が使えない番号lock機種を発売しようとまで考えている。
 携帯電話のshareを上げるために,おまけの機能を付けたら,本来の機能は使わないでおまけに人気が集まるという,かつてcaramelで始まったおまけ付き菓子商法と同じことが起っている。とりあえず,食玩と言われるこれらの商品に似せた名前を付けて,ケータイを「携(帯)玩(具)」とでも呼んでおこう。食玩は単価が安いことがpointだったが,子供はお菓子は捨ててしまって,玩具やシール・カードだけを欲しがる。ケータイでは,費用がかかる電話機能が敬遠されたのだ。
 「携玩」が電話の機能を備えただけの携帯万能情報機器であることは,韓国の進化例を見るまでもなく,すでに明らかである。「携玩」の購入者が電話を利用しなくなることでの収入減は,back margineなしの売り切り商品とすればけりがつく。携帯電話番号のpotable化の予定を来年に控え,電話番号lockは逆に人気を落とすだけの愚策と言えよう。
 日本では06年度に携帯電話向けとして,broad band化が容易な1.7GHz 帯と2 GHz帯の電波が開放されることになった。ここへ新規参入を目指すソフトバンクなどは,電話機能よりも通信機能の充実を重要視している。

 一方「携玩」の行き着く先は,パソコンである。すでにPDAやケータイには,低消費電力に着目して有機EL が使われつつある。有機EL の大型化と長寿命化はここ数年大きく進展した。現実に,日本のmakerが昨年15 inch程度の試作品を出した中,サムソン電子はこの5月にBostonの学会で40 inchの試作品を公開した。
 「携玩」の発展は,有機EL の大型・長寿命・低価格化と燃料電池開発が鍵を握っていると思われる。液晶より軽くて,薄くて,電池が長持ちする。
 すると,現在のnotebook PCよりはずっと軽くて持ち運びのじゃまにならない,ケータイ+keyboard付き有機ELという組み合わせが実現することが期待できる。今でもすでに売られている,写真のようなケータイに付けるkeyboardは,大人気で品薄状態だ。電話より文字の打ち込みに使いたい人が増えたということである。
 今のままのケータイでも,乗り物や出先で必要な文章を打ち込み,自分のaddressにmailとして送り,自宅や勤務先でそれを使うということで,パソコン機能の延長として使っている人が結構いる。

ケータイ用keyboard(なぜか横向きに接続,左側はcase)

 近い将来,筆者は出先で,かばんから紙のnotebookと同じ厚みと軽さの「携玩」(Dispaly・Keyboard・燃料電池)を取り出して,ケータイとつなぐ場面を想像したい。燃料電池の開発が間に合わなければ,かばんの中の大型の電池から電線で接続してもよい。
 「携玩」パソコン環境では,dataはもちろんそのとき必要なsoftwareも高速通信機能を利用し,downloadして使う。昔のUNIX work station時代の常識だった,diskless machineの使い勝手である。これで,どこでもubiquitus的に自分のパソコン環境が完成する。数GHzのclockという電気馬鹿食いのnotebook PCを持ち歩く必要はない。遅くてもよいから,火傷しないことと軽いこと,画面が広いことが,携帯情報機器に求められている。
 接続時間や送受packet数に課金することが無意味なのは,broad band接続や携帯のdouble定額の人気を見ればわかる。通常の通話機能は,SkypeのようにP2P技術の上に電話網を構築すればよい。ますます携帯情報機器としての「携玩」の普及に拍車がかかる,と考えるのが正解だ。いまの携帯各社は「携玩」としての使い方を認めないと,電話番号縛りのbusiness modelで生きて来た固定電話の会社と同じ運命になる。無線網の供給各社も,IP網やprovider serviceの性能とportal siteの充実が売りになるだろう。


2005年10月号 熱くならないパソコン

● 暑い夏の電力不足

 夏が終わるまでは夏の暑さの決算はできないが,中国の北京市では最高気温40℃を越す猛暑が6月中旬から断続的に続いている。当然ながら冷房機がfull稼働するために,電力消費量は6月22日にはすでに昨年のpeak値を越えたという。
 北京市では今年は1,070万kWが供給量の危険限界とされているが,7月7日に1,000万kWを越えてしまっている。危険限界を越えると工場の操業が止められたり,夜に操業させられる。
 暑さの続く期間がさらに長い,上海市を中心とする長江delta地帯では,事態はもっと深刻だ。最高気温が35℃を越えた日は,buldingのlight upやneon signを消したりしている。杭州市最大の観光spotの西湖も夜は真っ暗になってしまったようだ。夜,湖面に船を浮かべる観光客もあてが外れてしまう。
 中国では,電力は日本の9電力会社体制と同じように,一級行政区の各省市単位で発電供給している。中国の発電は石炭火力や水力が主であるが,省市間の送電網が不十分なことと,主に鉄道輸送に頼る石炭が産地から遠いため,ある省では7月中に石炭の在庫が1週間分を切り,全面的停電の可能性があるという。

● 省energy技術は日本の財産

 日本では幸い二つの要因から,現在は中国ほど電力不足が深刻になっていない。それは,原子力発電と省energy技術である。
 日本の四国の9割ほどの面積を持つ北京市の人口は,都市戸籍人口に正規の一時登録人口(365万人)を加えて1,524万人(2004年末)である。一方四国は,人口411万人(2003年10月)で544万kW(2004年度)の供給力を持つ。1/4強の人口で半分の電力を使える。一人あたりでは倍の電力消費である。
 この事情は,関東一円と山梨・静岡県の4,600万人(2003年10月)に供給している東京電力でも同じで,6,000万\,kW以上の供給力がある。
 北京市の域内総生産は2002年で3130億元(2005年7月現在1元13.5円)に達し,中国では人口あたりの比率は高い方である。しかしこの域内総生産は四国の14兆円(2000年度)の3割である。電力量あたりの域内総生産では,四国は北京市の6.5倍である。
 東京電力の営業範囲で比較すれば,この数字は10倍を軽く越えるであろう。日本のほうが,生産力に対するenergy効率が桁違いによいということになる。
 これからも分かるように,日本が世界に輸出できる技術としては,省energy技術がある。Notebook型パソコンでは,国全体としての省energyではないが,単体の省電力は可能な限り追求されている。
 自動車や冷蔵庫,家屋の構造に至るまで,省energyが求められてきている。燃費がよいhybrid型の自動車は,米国では値引きなしで販売されている。
 これらの省energy技術には,素材や構造の改良だけでなくIT技術も重要な要素である。組み込みsofwareの出来によって省energy効果が左右される。

● 人的資源の集中が日本を救う

 日本が今後生き残る手段として,経済産業省も組み込みsoftwareの振興を策して,数百億円の予算を投じている。IPA(独立行政法人情報処理推進機構)のソフトウェア・エンジニアリング・センタ(SEC)もこれを受けて,組み込みsoftwareの実態調査やskill標準の策定をしている。
 しかし,技術の第一線の人の意見では,このような総花的な梃子入れは,やらないよりはましだが,もう遅すぎるという。組み込みsoftwareという括りがすでに大きすぎるというのだ。
 過去softwareはOSやenterprise系がもてはやされ,その分野では日本はgameなどを除いて米国や外国に完全に押さえられてしまった。しかし,組み込みという分野もじつはかなり大きな分野となっていて,Linuxなども使われるに至り,その全分野を日本に囲い込むのは不可能になっている。
 したがって同じ組み込みでも,日本の強みを発揮できる,機器の動作に直結した省energy分野などいくつかに焦点を合わせて,人的資源を集中すべきだという。上質な技術者の供給体制が危うくなりつつある日本の現教育体制下では,総取り作戦は,虻蜂取らずとなる危険性が潜んでいると思われる。
 いまオフィスの電力消費に大きな影響を及ぼしているのが,パソコンなどOA機器である。せっかくの冷房電力もOA機器を冷やすことに使われている。Displayの液晶化とnotebook型パソコンの採用でパソコンの消費電力は下がったが,まだまだ快適な労働環境と省energyは改善の余地がある。
 熱くならないOA機器を開発して,世界に拡げるという戦略を立てるのはどうであろうか。

求む!熱くないパソコン。

雑誌「Interface」の「新談話室」未完