養豚家の農場
母音が正
しくないと聴き取ってもらえない
© 2005
Dr.YIKAI 2005年5月31日更新
ごたく
養豚家は京都人なので母音は口ごもっていた
ごたくを読みたくないと
きはclick
【母音の発音は京都風】
- 関西人は,みんな同じ関西弁をしゃべると誤解している人が多い。
でも京都人に言わせると, 大阪弁とくに河内弁などは聴くに耐えない汚い音だ。
- 東京人が,みんな標準語を話しているという誤解も同じようある。
こちらは別のところであげつらうことにする。
- 養豚家が中国語をはじめたとき,
養豚家の中国語の母音の発音に京都弁の気があることなど,
自分自身では気がつかなかった。
- なにせ,東京山の手方言(≒標準語)も習って覚えたのであるから,
音の出発点は京都弁なのである。
- 中国語をある程度話せるようになったとき,
ある中国人にあなたは舌が大きいのではないか,と言われて愕然とした。
唇を閉じない母音がこもって聞える,と言うのである。
【口は極端に動かす】
☆ 口を開ける
- 唇を閉じない母音とは,
「a」,「e」,「o」のように唇で調音しない母音である。
もっと口の先から音が聞えるようにしろ,と直された。
口の先で発音するのではなく,口の先から音が聞えるようにである。難しい指摘だ。
- それで,唇と舌先で唇を閉じない母音を出したが,口先三寸で人を丸めるつもりか,と怒られた。
結局,音が拡がる空間が口の前の方にあれば,口の先から音が聞えるという科学的な判断がついた。
- すなわち口を大きく開けろ,ということである。
- 音を出すのは喉であるが,母音の特徴を決めるのは,共鳴する空間の形である。
このときに口をある程度大きく開けておくと,音がこもらないので聴き易い。
☆ こもり気味の日本人
- 養豚家に限らず,口の奥で調音する唇を閉じない母音は,こもり易い日本人が多い。
あいまいな口の開き方をすると,
せっかく出した「a」,「e」,「o」の音が千金閨女(深窓のお嬢様)になってしまう。
- 養豚家は京都人なので,お坊っちゃまを決め込んでいたというわけだ。
- 落語に出て来るように,米粒は横のままでは口に入らず,縦にして玄能で叩き込む,
というおちょぼ口では唇を閉じない母音は無理なのだ。
【母音はカラオケで練習】
☆ 唄うような中国語
- 中国語は話し声が歌のようできれいだ,とよく言われるが,
それは四声があるからだけではない。
唇を閉じない母音が透きとおるように響き渡るからだ。
- もっとも現在のすべての中国人がそのような発音をするとは限らない。
私の知っているある中国人は湖南の人だが,口の中でもごもご言うので,
極めて聴き取りづらいし,歌のようでもない。
- 諸外国に残る古い中国語についての記述からは,
唐人(からびと)は歌を唄うようにゆったりと話す,
ということが伝わっている。
京劇など伝統芸能に残るoperaのようなあの発声だ。
- 世の中がゆっくり回っていた時代の中国人は,士大夫水準の人だけだったかもしれないが,
いまの若い中国人のように,口の中でもごもご喋ったり,
耳に突き刺さるような話し方はしなかったようだ。
いまでも,年配の中国人には悠揚迫らない調子で話す人がいる。
☆ カラオケルーム大歓迎
- 唇を閉じない母音の練習はカラオケの練習と同じ。
もっとも,カラオケでは不足している共鳴音を機械が補ってくれるから,
さほど気にしないで唄う人もいるが,発音は共鳴を付けないで練習。
- 養豚家は,「音痴だから人前では決して唄わないように。 」という,
女房の遺言を守って生きているので,唇を閉じない母音の発音は今後改善されない。
だからカラオケルームへ行って,中国語の練習をすることもない。
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のごたく
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ここから本論
口を大きく開ける音
青字のpinyinを
clickすると音が出る 出ないときは注意書を見る
口をしっかり閉じる音へ
鼻音で終わる音も母音の一種へ
多重母音も1音節で発音へ
【唇を閉じない母音】
☆ どの言語にも母音がある
- どの言語にもある唇を閉じない母音として「a」,「e」,「o」がある。
でもこれとて,日本語と英語そして中国語では異なっている。 註:音声学では,「a」は開母音,「e」,「o」は中母音,
その他「i」,「u」,「ü」は閉母音と言っている。
- しかも,その音は前後の母音や子音で変る。
しかし,その言語を話す人は変っても同じ音だと思っている。
英語ではその上,長く延ばす母音と短い母音は別の母音と認識される。
日本語にも長音「ー」という形で長母音がある。
- 英語の発音がちゃんと出来る人のほうが,
普通の日本人よりも中国語の母音を習得するには有利である。
- 逆に中国語の発音が出来るようになると,英語の聴き取り能力が上がる。
☆ 相対的な認識
- 実際にそれまで,日本語とそれ以外の言語(英語)という二者対立体制で学習してきたのが, 中
国語を入れた三者関係に変るのだ。
外国語が日本語との敵対関係ではなく,相対関係という認識。
- それが進むと,英語から直接中国語に,その逆という翻訳練習が役立つ。
といっても,「今天太熱。」=「It's very hot
today.」程度の簡単な会話水準の練習が,いちいち日本語を介さない会話能力の向上に役立つ。
【まず「a」から練習】
☆ 「a」の音の出し方
- とにかく口を大きく開ける。前後を「i」や「n」のように口を閉じる音に挟まれないかぎり,
どこまでも明るく,空まで届くような「アー」を出す。
英語のfatherの「a」と同じである。
- 音韻学的には,「a」はおおくの場合,それほど喉の奥のほうから音を出さないことになっている。
発音の教科書にもそう書いてある。そこに落とし穴がある。
- とにかく,騙されたと思って大きな口をあけた「a」を出す。
教科書どおりでは,日本人は口の開きがどんどん小さくなってしまうのだ。
☆ 「a」を出す練習
- 「a」はすでに四声の練習で使ってしまったが,サボらずによく練習する。
ほとんど声楽家になったつもりで。もちろん四声を付けて。
- このpageを見ている方々は,すでに四声が完全に出来るようになっているはずであるから,
四声の記号を付けよう。
ā,á,ă,à
- どんな組み合わせでも出せるようにする。
āā,āá,āă,āà
áā,áá,áă,áà
ăā,ăá,ăă,ăà
àā,àá,àă,āà
【「o」は丸い,それは絶対条件】
☆ 丸くなけりゃ「o」じゃない
- 口を丸くする。とにかく丸く。日本語の普通の「オ」ではな
い。
日本語で,ちょっと驚いて「オッ」と言うときの口がふだんの「オ」よりも縦長に開く状態が近い。
さらに両頬をすぼめて音が奥に留まらないようにする。
- 中国語では,母音の「o」単独では日本語と同様に感嘆詞くらいにしか使わない。
- 子音がない字で「o」から始まる字は
ōu(欧),ŏu(偶) などわずか。
子音+「ou」の字はたくさんある。すなわち音節の頭には「o」は立ちにくい。
☆ 単独の「o」は練習しない
- 「o」で終わる単独母音は,口唇で出す子音だけを好む。
bō(波),pō(頗),mō(摸),fó(佛) 註:「fo」と発音する字はこれ以外は使われない。
- 単独母音の「o」はあまり使わないので,子音を付けて練習す
る。
できればいろいろな四声を二つ組合わせて練習するとよい。
bō,bó,bŏ,bò
pō,pó,pŏ,pò
mō,mó,mŏ,mò
fō,fó,fŏ,fò
☆ 二重母音の後にくる「o」は,元々は違う音
- 「o」で終わる二重母音は二つある。
āo(凹),u(w)ō(窩)
- 「a」の後の「o」の発音は,日本人は心もち「u」に近くなるように頑張って発音すると本物らしくなる。
- 「u(w)o」の場合は,必然的に「u」に引かれるので楽に「o」になる。 「ao」は多
少強引に「au」と言ってもよい。
でも,あとで説明するが,「アウ」はだめ。
- 北京方言には「au」という発音がないから混ざる心配がな
い。
実際に中国人の発音も「au」と聞こえる場合がある。
- 二重母音が正しく出せる人は,二重母音でも「o」の発音練習。
なお二重母音「ao」の「o」は主母音ではない。
āo,áo,ăo,ào
wō,wó,wŏ,wò
- じつは,音韻論的には「ao」は本来「au」で, 「a」の影響で「u」が「o」に変
化したもの,
「uo」,「ou」も本来「ue」,「eu」で, 「u」の影響で「e」が「o」に変化し
たものだと言われている。
- なお,「bo」は「bu + e」がまとまった音だと考えることも可能。
- まったく関係ない話だが,養豚家が大好きな武侠電視劇で,
よく弟子が師匠を遠くから大声で呼ぶとき,「shīfue(師傅+?)」と叫んでいるように聞こえる。
このときの最後の引っ張る発音は何だろう。
「fu」が軽声だから,大きな声で引っ張れないので「e」を付けたのかな。
「fó(佛)」の音はこうして出来たのかな,と養豚家は素人だからいい加減に勘繰る。
【口が丸くない「ong」は別の音になってしまう】
- 日本語では口が丸かろうが平らだろうが「オ」は「オ」であり,「ヲ」と違うだけだ。
実際には,最近は「ヲ」の発音ができる人は減っている。
- まだ練習はしていないが,
韻尾「ng」が「o」に付いた「ong」の音は「u+eng」の音が変化したもの。
本来二重母音。したがって,
それを単独母音の「o」と認識している中国人は少ない。
ゆっくりと発音してもらうと,「ong」ではなく「u + eng」に戻るし,
頭の子音がないときは常に「u(w)+ eng(翁)」だ。
- ここに「o」の口が丸い秘密がある。
すなわち,始めは「u」の口なのであるのが,
後ろの母音「e」に引かれて「o」となったのだから,
この「o」は唇を丸く尖らすという「u」の性質を受け継いでいる。
- さて,口を丸くしないとどうなるか。「ong」の場合は,
中国人には違う音に聞こえる。
すなわち,丸くないと「u + eng」が「ong」になるときの,「u」の音が前にあるという原則に反する。
- 以下の音を比べて見る。どっちに聞こえるかは, 聞き手が日本人と中国人とで異なる。
hóng(紅),hオng,héng(横)
【出せない人は十年やっても出せない「e」の音】
☆ 力を抜こう「e」の発音
- この音は英語で言うあいまい母音と同じ感じの音。
しかし英語と違う。はっきりと四声が付くし,喉の緊張も少ない。
- なお,日本語の「ウ」の音もこの音に近い。
ただ,日本語の「ウ」は頬にまだ緊張があるので,
「ウ」の音は「e」より口の前のほうから出る感じがする。
- どうやって「e」を出せばよいか,簡単に出来る方法はない。
五年やっても十年やっても出せない人は出せない。
とりあえず処方箋。
- 喉や口唇,頬,舌を全部だらしなくして,強く息を吐く。
もちろん「ハー」ではなく声有母音。
- 日本語では,「アー」とか「ウー」とか表現される,
疲れたときや緊張が解けてホッとしたときに吐き出す音。
- 音は喉から出す。そのため喉はいくぶん緊張する。
口の他の場所はこの音が出てくるのを妨げない。
いい加減に出した日本語の「ウ」に近い。頬もだらしなくする。
- いわば,日本語の「ア」の口をして,喉からだらしない「ウ」を
出す。
- 音韻的には「オ」に近いとされているが,だらしない「ウ」から出発したほうが楽。
☆ 「e」は気長に練習
- あとは音を聴いて同じになるようにするだけ。
ē(阿),é
(囮),ĕ(惡),è
(餓) だらしない「ウ」
「ア」の口をした「ウ」
註:「阿」は「阿彌陀佛」,「惡」は「惡心」の時の発音
- 英語のあいまい母音とは音はかなり違う。でも英語以上にそのあいまいさを発揮するのが「e」。
- 完全に「ウ」ではまずい。それは日本語に多重母音あまりがないから。用心しないと「ウ」は長音「ー」になってしまう。
【「e」は2種類の音を同じ「e」で表現している?】
☆ 主体性がない「e」
- 「e」はその発声の構造から,口唇子音の中の「b,p,f」とは相性が悪い。「e」は「o」に変化する。
「me」だけは無理しているが,軽声しか出せない。「mo」の音がずっこけたのかもしれない。
しかも,「me」を「mo」と発音しても通じる。
- Pīnyīn(拼音)の「e」ではなく,
主母音「e」の変化を検証。
註:/e/という表記は音韻学で言う音素の記号。
- 「e」単独か「e + ng」では音は変らない
- 「i」の前後では /e/ または /ε/ となる。
- 「ü」の後では /ε/ となる。
- 「n」の前では /ε/ となる。
- 「u」の前後では /o/ となる。
- 口唇子音の後では /o/ となることが多い。
- 「u + e + ng」では「u」と複合して /o/ になり易い。
(前の項目)
☆ 練習時には違う音と割り切るのがよい
- 養豚家は音韻論には詳しくないが,
学者によるとこれでも「e」は一つの音(素)だという。
学習する方としては迷惑至極。
「shuō(説)」の「o」と「xué(学)」の「e」が音韻論的には単音の「e」同じ音などと言われても困る。
- ここで,断固決断を下す。理論は理論,現実は現実。 2種類の「e」がある,として練習。
- 前後の音に引きずられて化けた「e」は, 単音の「e」とは別の「e」だとして発音す
る。
感嘆詞の「ê(誒)」の発音とほとんど同じ音になった,と決める。
そうしなければ練習できない。
- 変化した「e」は「ê」とほぼ同じ発音。
ゆっくり読んでも,さらに他の子音や母音とくっついても,もう変ることはない。 日本語の「エ」でも間に
合う。
☆ 「ian」と「üan」の「a」は「ê」か?
- この際,これも子音がない単体の「yuān(冤)」以外は,
基本的には「ê」として発音練習する。
東北方言で「エ」を発音する人は止めたほうがよいが,やはり日本語の「エ」で間に合わせる。
- ところが,「ian」,「üan」は「er(兒)」化すると「ê」ではなく「a」に戻る。
さらに,子音が付いても「üan」を「a」のままで発音する例も多い。
- Nativeだって,いろいろな由来の音を聞き分けられなかったり,発音も仕分けられないこともある。
ごたく
音韻論のごたく
先を急ぐ人はclick
「a」からの/ε/は,音韻的には「e」由来の/ε/と違うことぐらいは,
養豚家だって百も承知。
じゃあ,以下のような説明を読んだだけで理解して,あとはCDを聴いて自分でなんとかしろ,と言われても・・・。
北京語は声母(子音)+韻母(介母+主母音+韻尾)で音節が構成されている。
韻母は「er」と「ê」を除くと,音声学的には37種が認められる。
なお,子音がないときは母音の発音の前に軽い緊張が認められ,それも声母の一種と数えることができる。
韻母の中の主母音は,広母音「a」,中母音「e」,狭母音「i」の3種からなる。
主母音の前に付く介母は「・」(ナシ)「i」,「u」,「ü」である。
また主母音の後につく韻尾は「・」(ナシ),「i」,「u」,「n」,「ng」の5種が認められる。
なお,「o」は「e」と同時に使用されないところから見ると,相補的に使われている,と解釈できる。
母音の組合わせは,そのすべてが可能なわけではなく,介母と同じ音は韻尾には同時に現れることはない。
「i/ü」+主母音+「i」や,「u」+主母音+「u」の組合わせは発音経済上作られることはない。
さらに,主母音「i」は,実際にはその前に付く介母と同化してしまい,介母+主母音があたかも主母音のように振る舞う。
実際に,生の主母音「i」は,わずかに単体の捲舌音「zhi,chi,shi,ri」と舌端音「zi,ci,si」の母音部として顕れるのみである。
したがって,多重母音は,主母音「a」と「e」の前後に介母と韻尾が付いた形となる。
このようにして,可能な組合わせを数えると34種の韻母が極めて体系的に作られていることが分かる。
音声学的な数と合わないのは,音素として同じものが,音声上は異なる音になるからである。 |
あまりに理論が難解なのと,Web上に描出できない発音記号が多いので,
養豚家が偉い先生の著述から適当に纏めた。
勝手に引用し,かつ内容を悪く変更したことにお詫びする。
ここの引用は,音声と音素,音価の区別が付いていない音韻論などあるか,という批判は甘んじて受ける。
それにしても,何が体系的なのか,発音を習う立場では力不足で理解できない。
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口をしっかり閉じる音
鼻音で終わる音も母音の一種へ
【口を閉じたら音が出ないか】
- 唇近くで音を出す母音には,「i」,「u」,「ü (yu)」がある。
- どれも日本語より極端に唇に力を入れる。英語の同様な長母音に近い。
日本人の感覚では「i」以外は, 口をほとんど閉じるつもりで発音してちょうどよい。
- ごたくを並べたところで触れたが,
単独の捲舌音「zhi」,「chi」,「shi」,「ri」と舌端音「zi」,「ci」,「si」の後の母音は, ここでの「i」とは違う音。
- 「i」,「u」,「ü (yu)」の順に練習がやりやすく成果も出やすい。
【「i」は唇を思い切って横に引く】
- 母音 /i/ は,英語の「Oh! I see!」などの長母音 /i:/ と同じく,唇を
思い切って横に引く。舌も緊張する。
いやがらせする時の「イーだ。」の「イ」と同じ。 油断するとすぐに唇が動かない日本語の「イ」になるか
ら,
顔の形が変るほど横に引く。
註:普段から唇を大きく動かしていると,表情筋が衰えず,
皺が寄らない。大脳の前頭葉も活性化し,老化やボケの予防にもなる。
- 四声を付けて練習。
yī(衣),yí(移),yĭ
(以),yì(義)
- 必ずいろいろな四声を二つつなげて練習する。
聴いて意味が分かる組合わせの単語には漢字を付けた。
yīyī(依依),yīyí,
yīyĭ,yīyì
yíyī,yíyí,yíyĭ,yíyì(疑義)
yĭyī,yĭyí,yĭyĭ,yĭyì yìyī,yìyí,yìyĭ,yìyì(意義)
【「u」は唇を思い切って前に突き出す】
- 母音「u」は,英語の「boot」の長母音 /u:/ と同じく, 唇を
思い切って突き出
す。
決して日本語の「ウ」のようにだらしなくはない。
極めて酸っぱいときに口をすぼめた状態。
- 両側の頬はできるだけすぼめて,窪むようにする。
だれでも簡単に出せるが,常時気を付けていないと,
すぐ日本語の「ウ」になる。
- 四声を付けて練習。
wū(烏),wú
(無),wŭ
(五),wù
(物)
- 必ずいろいろな四声を二つつなげて練習する。
聴いただけで意味が分かる組合わせはほとんどない。
wūwū,wūwú,wūwŭ,
wūwù
wúwū,wúwú,wúwŭ,wúwù
wŭwū,wŭwú,wŭwŭ,
wŭwù
wùwū,wùwú,wùwŭ(戊午),wùwù
【難関「ü」は日本語にない母音】
- 母音「ü」は日本語や英語にない母音。
独語の「ü」と同じ。上古代の中原発音にもなかったという。
「i」や「u」の発音が完全でない人がこの練習をやると,
十年経っても出来ない。
「ユィ」などと発音してごまかすと,永久にものにできない。
- 発音法は二つある。多少違うが,どちらでも同じように聞えるから不思議。やりやすい方を選ぶ。
- 「u」の口をして「i」を出す。唇を思い切って突き出し,
舌先を細くして下歯の上に載せて,多少下向きに息を吐いて「i」を出す。
- 「i」の口をして「u」を出す。「i」を出している口の左右を閉
じ,開口部の幅を半
分から三分の一くらいに狭め,厚みが薄い息を吐いて「u」を出す。口は決して上下に開けない。
- 1.の方法の yū
(迂)
2.の方法の yū(紆)
- 練習し初めは,唇の筋肉が慣れていないので,疲れてだるくなる。
逆に疲れないようなら,発音が非常にうまいか,間違っているかである。
口笛が吹ける人は,数日間口笛で筋肉の慣らしをしたほうがよい。
- 四声を付けて練習。
yū(迂),yú(魚),yŭ
(雨),yù
(玉)
- 必ずいろいろな四声を二つつなげて練習する。いくつかの文章語の単語がある。
yūyū,yūyú,yūyŭ,yūyù
yúyū,yúyú,yúyŭ,yúyù(余裕)
yŭyū,yŭyú,yŭyŭ,yŭyù
yùyū,yùyú,yùyŭ(遇雨),yùyù(郁郁)
ご
たく
入声音は日本語漢音に残る
先を急ぐ人はclick
【漢音は唐代の発音の歪んだcopy】
日本に導入された漢字音を利用して,現代北京方言の発音を素早く見つける,という危ない方法がある。
この中で絶対的に確かなのは,韻尾の/-n/と「ン」の関係だけ。
中国語の音節は,声母+韻母で成り立っている。韻母はさらに,介母+主母音+韻尾で成っている。
ただし,発音上は主母音と韻尾は一体化している。
現在韻尾は/-n/および/-ŋ/が子音で,/-i/,/-u/が母音,さらに/・/(ナシ)のこともある。
そこで,現在の北京方言で韻尾が/-n/で終わる字は,
日本語の漢音(唐時代の発音を反映したもの)では,例外なく「ン」で終わる,という対応がある。
これは逆も真である。
同じく/-ŋ/で終わる字は,「ウ」または「イ」で終わる。
「ウ」,「イ」で終わる字は,いろいろな北京方言の音に対応しているので,逆は成り立たない。
これは,/-ŋ/が日本語にはない音なので別の表記になった,ということである。
【入声音】
中国語の音は,歴史が下るにつれて単純化と複雑化の両方を経て変化してきた。
大きく分けて,上古漢語(春秋戦国〜三国),中古漢語(六朝〜唐),近世漢語(宋〜明),近代漢語(清〜)と多国分裂や大きな戦乱,異民族の流入などを
期にして変化が表面化している。
上古漢語の上に太古漢語(〜西周)を置くこともある。
しかし,こと音に関しては研究は進んではいない。
日本に伝来したのはこれらの内,中古漢語が最大の規模である。
その後の音も事物とともに伝来していて,「行燈:アンドン」,「椅子:イス」など,
漢音とは違う読み方をする。
中古音の子音韻尾は二種類確認されている。
[陽類] /-ŋ/,/-n/,/-m/ [入類] /-k/,/-t/,/-p/
これらの発音は,現在も広東方言では保存されている。
北京方言では,/-m/は/-n/に統一されている。「三」は広東方言では[sam]である。
韓国でも会社名の「三星」を「samsung」と表記している。
ところが,日本の歴史的假名づかひでは「三」は「サン」と振っている。
/-ŋ/は介母と主母音の種類で日本語の語尾は「ウ」,「イ」の差異があるが,
必ずしも北京方言の発音と正確には対応しない。言ってしまえば,発音推測には役に立たない。
/-k/,/-t/,/-p/のいわゆる入声音と漢音の間には,
/-k/→「キ,ク」,/-t/→「チ,ツ」という明確な対応がある。
/-p/については,歴史的假名遣ひに写し取ってからの音の変化が激しく,入声音は保存されていない。
/-p/に対応する読みは原理的には「ヒ,フ」になるのであるが,
ハ行の音は平安時代の[p-]から次第に変化し,
室町後期には息の破裂がない両唇音の[Φ-]に変っていた。
ついには江戸時代に口をすぼめることすら止めて[h-]になった。
現代仮名遣いでは,この音は「イ,ウ」と書かれている。
これでは/-ŋ/からの「イ,ウ」との区別が付かない。
一方,これら入声音は北京方言でも失われている。多くは第4声になっているが,素人の養豚家では結局発音推測に使えない。
漢語の中では韻尾/-ŋ/の発音は,比較的安定に保たれている,と理解するのが正しい。それは,逆に外国人は/-ŋ/の発音には,十分注意を払う必
要があるということである。
【春秋戦国時代は多くの字は子音で終わった?】
余計なことを言うと,上古音では母音で終わる韻尾は少なく,
その一部が中古音で母音化した,と推定されている。
[陰類] /-g/,/-d/,/-r/ (/-s/) という説もあるが,外国音の翻訳字から/-r/と推定されている)
この音は用語からも分かるように,有声音で弱く発音されていたのかもしれない。
やがて,主母音の影響を受け母音化し,/-i/,/-u/,/・/(欠落)となり,母音の韻尾になった。
このため,詩経では互いに韻が踏んであった字も,唐詩では入類の文字との間で韻が踏めなくなった。
【語頭子音には英語の「clock」のような二重(複)子音があった】
「bōlí(玻璃:ガラス)」のような外来語の音訳ではない,
漢語固有の単語であるにもかかわらず,その物事を表す専用の字を二つ使う2音節単語が漢語にはある。
その例が多く見つかる/kl-/型では,「kuĭlĕi(傀儡:カイライ,あやつり人形)」,
「gōulóu(佝僂:クル,せむし)」など日本語のカナ漢字変換で出て来る単語もある。
これらは現代中国語でも2文字で使うのが普通である。
2文字化は,戦国秦漢時代になって中国の版図が拡がり,二重子音の発音が出来ない人が増えた結果,
日本に持ち込まれた入声音と同じように,2音節(2文字)化することで,
概念と字がまとまって生き延びたと考えられる。
このような二重子音の一つに/ŋl-/があったと考えられている。
/ŋlak/(楽)は/-k/韻尾の音である。
この字は上古では今の「音楽」と「快楽」の両方の意味を持っていたが,
二つの意味に二重子音の前後の音を振り分けることで,1音節のまま生き延びた。
詩経ではどちらの意味でも同じ韻を踏んでいるが,
唐詩では日本漢音の/ŋak/:「ガク」と/lak/:「ラク」で分かるように,発音で意味が別れている。
北京方言ではこの二つの発音は,/ŋ-/が母音化した拗音介母の影響があり,
別々に音韻変化をして「yuè」と「lè」になっている。
【日本人のアホな誤用】
なお,「xué(学)」の意味に「楽」を当てて,「何々楽」と称して,
「何々」が楽に学べるという,暴走族がよくやる音のこじつけで名前を付ける人が多い。
小学校で学ぶ,「ガク」と「ラク」の読みの違いによる意味の違いを無視した遣い方である。
「何々楽」はsiteだけでなく,役所の生涯教育の宣伝にも使われているが,
「学」と「楽」はいまの北京方言でも,明らかに発音が違う。
たまたま日本の漢音で「ガク」という音が共通だからといって間違った使い方をするのは,
漢学の素養がみじんもなくなってしまった現代日本人の日本語力の衰退の現れ。
ちなみに,日本の漢音の元になった唐代には,「学」は/ŋak/「楽:ガク」とは違い,/ĥak/「学:[ガハ]ック」に近い発音だった。
註:[ĥ-]は本来の記号がないので,似た記号を流用した。
音は喉音[h-]の濁音。
本論にもどった
鼻音で終わる音も母音の一
種
【韻尾の鼻音は前の主母音とまとめて】
☆ まず鼻音をしっかり
- 漢語の音の変化の中では韻尾の「-n」と「-ng」は安定した音。
- 北京方言の「-n」は日本語の漢音でも「ン」で保存。
- 鼻音の発音は,はっきりと分ける。
日本語には発音のし分けがないので,混ざらないように練習を重ねる。
英語の発音が正しい人は楽。
「-n」は舌の前上面を歯茎へピタリと付けて, 息が口の外へ漏れないように塞ぐ。
「-ng」は舌の後ろを喉からの出口へピタリと付けて, 息が口の中へ入って来ないよう
に塞ぐ。
☆ 母音「a」は鼻音に引きずられる
- 主母音「a」が付いた「an」と「ang」の聞き分けは,
なんと主母音の差で。介母や声母が付いても変らない。
ān(安),āng
(骯)
- 「an」の「a」は口の中央で音が出る。
「ang」の「a」は口の奥のほうで音が出る。音声学的には別の音。
しかし,これは出し分けるのではなく,
本来奥のほうで出る「a」が「-n」を出すために前のほうに移った,
として練習するとうまくいく。
- 発音訓練は必ず「-n」と「-ng」をpairで行う。
ān,āng
án,áng
ăn,ăng àn,àng
- 二音節で練習。かならず人に聴いてもらって,発音区別ができているかどうか確認。
ān'āng,ān'áng,ān'ăng,ān'àng āng'ān,āng'án,āng'ăn,āng'àn
án'āng,án'áng,án'ăng,án'àng áng'ān,áng'án,áng'ăn,áng'àn
ăn'āng,ăn'áng,ăn'ăng,ăn'àng ăng'ān,ăng'án,ăng'ăn,ăng'àn
àn'āng,àn'áng,àn'ăng,àn'àng àng'ān,àng'án,àng'ăn,àng'àn
☆ 母音「e」も鼻音で変る
- 主母音「e」が付いた「en」と「eng」の聞き分けも,
日本人は主母音の差で練習。
ēn(恩),ēng
- 発音訓練は必ず「-n」と「-ng」をpairで行う。
ēn,ēng
én,éng
ĕn,ĕng èn,èng
- 二音節で練習。かならず人に聴いてもらって,発音区別ができているかどうか確認。
ēn'ēng,ēn'éng,ēn'ĕng,ēn'èng ēng'ēn,ēng'én,ēng'ĕn,ēng'èn
én'ēng,én'éng,én'ĕng,én'èng éng'ēn,éng'én,éng'ĕn,éng'èn
ĕn'ēng,ĕn'éng,ĕn'ĕng,ĕn'èng ĕng'ēn,ĕng'én,ĕng'ĕn,ĕng'èn
èn'ēng,èn'éng,èn'ĕng,èn'èng èng'ēn,èng'én,èng'ĕn,èng'èn
本論のつづき
多重母音も1音節で発音
(作成中)
【韻母】
- 主母音に介母と韻尾が付く組み合わせは,次の28通り。これらは多重母音として発音練習の対象。
註:単母音には,主母音「a」,「e」,「o」,「yi/-i」,「wu/-
u」および「yu/-ü(u)」,舌尖音と捲舌音の「i」で7通り。さらに子音を取らない「er」と「ê」が加わって全部で35通り。
介 母 |
「・」 |
「i-」 |
「u-」 |
「ü-」 |
「・」 |
「i-」 |
「u-」 |
「ü-」 |
主母音 |
「a」 |
「e」 |
韻
尾 |
「・」 |
(「a」) |
「ya/-ia」 |
「wa/-ua」 |
− |
(「e/o」) |
「ye/-ie」 |
「wo/-uo」 |
「yue/-ü(/u)e」 |
「-i」 |
「ai」 |
− |
「wai/-uai」 |
− |
「ei」 |
− |
「wei/-ui」 |
− |
「-u」 |
「ao」 |
「yao/-iao」 |
− |
− |
「ou」 |
「you/-iu」 |
− |
− |
「-n」 |
「an」 |
「yan/-ian」 |
「wan/-uan」 |
「yuan/-uan」 |
「en」 |
「yin/-in」 |
「wen/-un」 |
「yun/-un」 |
「-ng」 |
「ang」 |
「yang
/-iang」 |
「wang
/-uang」 |
− |
「eng」
|
「ying
/-ing」 |
「weng
/-ong」 |
「yong
/-iong」 |
- この表は,現在の北京方言の音韻の構造を示している。発音する際はこの表の構造を頭に入れておくと便利。
- 多重母音の発音練習は子音を付けないで,必ず第3声から始める。なぜか。
【韻尾に母音が付く】
☆ 「-u」
- 前にも議論したが,韻尾「-u」が主母音「a」に付くと,韻尾の音は「-o」に近づく。
- 主母音が「e」のとき韻尾に「-u」が付くと,主母音の音が「o」に近づく。
☆ 「-i」
【前に介母が付く】
☆ 「u-」
☆ 「i-」
- 介母「i」が付くと「e」の音が変る。 yē(椰),yī(e)ng(庸)
註:
未完