Dr. YIKAIの言いたい放題「日本の世相と中国関係」

2008年版 Copy Right 2008 Dr.YIKAI Kunio

「言いたい放題」の目次へもどる
2001/2002年版「日本の世相と中国関係」へ
2003年版「日本の世相と中国関係」へ
2004年版「日本の世相と中国関係」へ
2005年版「日本の世相と中国関係」へ

2006年版「日本の世相と中国関係」へ
2007年版「日本の世相と中国関係」へ

2008年1月16日 国家の品格
2008年2月1日 大都市の愚民
2008年12月28日 想定内の経済危機

2008年1月16日 国家の品格

 今回の題名はパクリである。
 二度も延長された臨時国会で,1 barrel (=117.347766L)がUS$100を突破した石油を米国に只で呉れてやるという法律が,衆議院での2/3の再可決という50数年ぶりの暴挙によって成立した。

 米国が勝手に始めた戦争が原因で石油の値段が急騰し,日本はおろか世界経済がめちゃめちゃになろうとしている。米国版“住専問題”とも言えるsub-prime loan問題が切っ掛けで米国経済はガタガタになりつつあるが,Iraqへの侵攻をしていなかったら,米国経済はこの程度の不良債権を容易に償却できたと思われる。なぜなら米国経済は,住専問題が弾けた際の日本のようにbubble状態ではなかったからである。
 その米国ですら大統領が民主党に変わるとIraqからは手を引くだろうと予測されている。すでに政権交代でBush政権の最大の支持国だった英国や豪も派遣していた軍隊を引き上げることになった。
 いまさら米軍に給油を再開しても世界の国からバカにされるだけで,ほとんど国際貢献と認めてはくれないだろう。同じ金額の灯油を厳冬の貧困な国々への援助に回したほうが,国際社会ではより受け入れられることは,疑いない。

 このような政権を選出したのは,如何に小泉に躍らされたといっても,日本国民であることは間違いない。すなわち,国民の品格が国家の品格を形造っているのである。
 多数党になれば何をやってもよいというのは,共産(労働)党の独裁下にある中国や北朝鮮を見れば,結果はすぐに分かる。すなわち特権を有する人々への極度の優遇と弱者の徹底的な切捨てである。
 自民党も公明党を抱き込んでの長期独裁政権を維持してきた。その結果,その下にいる役人だけでなく,企業家もすべて自分の首は上の人が握っていると勘違いして,国民を愚弄する政治や商品・serviceを提供しつづけてきた。

 2007年はそれらが一部だけ暴露された年でもある。国家の品格は国民の品格が決定するが,国家の指導者層の品格も確実に国民の品格を賎しめる。建築強度や牛肉などの食品の偽装だけでなく,年金に至るまで偽装に明け暮れた1年であった。もっとも偽装が激しかったのは突然辞任した安倍前総理であろう。
 家庭でも子供がそうであるが,国民は上がやることを真似て,どこまで品格を落してもだいじょうぶか,度合を見ながら徐々に堕ちて行くのだ。
 贋物や危険なものの天国である中国は,その典型的な国である。すなわち国家の指導層は何をやっても正しいという,3,000年近く前から続いた考えが国民の大半を占めている以上,「百年待河清」でしかない。

 台湾では8年続いた民進党政権が,共産党に媚びへつらう可能性が高い国民党政権に代わる。現陳水諞総統が台湾人から見放されたのは,その親族が旧態依然とした中国的権力構造を発揮して,総統の親族として利益の分け前に預かったからである。元国民党総統の李登輝が清廉潔白の士で人気が高かったのに便乗して総統になったのだから,陳水諞総統は身辺を整理しておかなくてはならなかったのだ。
 日本で高等教育を受けた李登輝と中国人から脱することが出来なかった陳水諞の品格の差であろう。ただ,台湾人も小泉のときと同じく共産党に操られている国民党の幹部に騙されてしまったようだ。台湾の香港化が筆者の目の黒い内に見ることが出来るかもしれない。
 すでにこのような台湾に見切りを付けて,子女を国外に脱出させている家族が台湾にはたくさんいる。台湾の成長は米国留学から帰国した大量の技術者が可能としたのだ。結局自国で最先端の人材を育てる体制造りが出来なかった台湾は,今後はこのような優秀な層の流出によって,共産党が意図する単なる「台湾島」としての水準に品格を低下させて行くのが心配である。

 台湾が大陸に併呑されると日本にとってはたいへんな損失になる。本来,日本は国内問題で揉めている時間はないのである。静かに台湾を助けなくてはならない。
 台湾人の日本でのvisaなし滞在は3ヶ月間認められている。これは欧米人に対する待遇と同じである。日本も台湾政府に今の1ヶ月ではなく3ヶ月に滞在を認めさせるように要求すべきである。そうすれば多くの日本人が台湾に移住できる。
 今,台湾が退職した日本人に出している「花甲(=還暦のこと)」査証は6ヶ月でしかない。その場合いろいろと手続きも複雑であり,筆者も申請する気がしない。3ヶ月に一度位の帰国してもどうということはないから,3ヶ月の滞在visaの実現は,日本の台湾支援を安価に実現する手段としてはたいへん有効であろう。ただ国民党政権下になると,このような政策の実現は共産党の反対で無理かもしれない。

 筆者の長年の夢である,閑になったら台湾の高原でのんびりという人生は,台湾の国家の品格が下がりつつある現状では絶望的かもしれない。


2008年2月1日 大都市の愚民

 大方の予想通り大阪府知事に極右の橋下が当選した。東京都と同じ構図である。威勢のよいことだけを口にして場当り的な行動をとるところは,多分TV出演の情況から見ても明らかであろう。
 なぜ賢い人が多いはずの大都市の首長にこのような無責任な戦前思考の右翼政治家が成れるのかを考えてみたい。もちろん大都市の選挙民がアホであることは言うまでもないが,対立候補を出す側ももっと人選をしなくてはならない。すなわちアホは外見に騙されるのだから,一見勇ましいことを言う小泉や石原のような人物を政治家に選んでしまうのだ。
 日本が生き残るにはどのような戦略を立てるべきかについて,大きなplanを持たずに,ただただ戦前の愚民化政策を押し進めようという人物だ。

 まあ,小型小泉というか,出遅れた石原というか,改革という声に惑わされて,大阪府民もまた反動右派を選んでしまった。ほんとうは巷で地道に人々の役に立っているような人を捜して知事にしないといけない。声高に主張ばかりする人は,自分のために知事や総理をやってる。でも今までの知事と相手候補も相手ですから,反動右派は本当に狙い目が上手と言える。
 東京の改革を例にとれば石原が知事をやっている間に,どんどんといろいろな福祉切捨てが,国に先行して横行し,裕福な都民でないと東京には住めないという情況になってしまった。
 黒字団体である東京都が,私の非常勤講師の交通費まで屁理屈を付けて切捨てたのにはあきれた。余ったお金で,石原は海外に豪遊し,バカな四男に都から莫大なお金を渡している。さらに,北京後8年目など現実的には不可能なOlympicの招聘に無駄金を撒いているありさまである。

 橋下が朝のTV番組で,弱者切捨てや超右翼的のことを発言していた内は,幾つもある意見の一つとして聴いていればよかったのだが,それが大阪府でたった一つの正当化された意思となると,大阪府は中国と変わらないことになる。
 役人はお追従が大好きだから,今後は府民はもっとひどい目に遭うのは間違いない。大阪は宮崎県とは規模が違い,一つや二つのeventで変えられるものではない。

 たとえば都立高校は,授業料も上がった上,管理がやたらと厳しくなったので,私立や国立の滑り止めに成り下がった。今,一部の高校にだけ力を集中して東大合格者数を増やそうと躍起になっているが,それは本来私立がやって来たことの真似でしかない。 大阪府には政令指定都市大阪市に政治と行政があり,府からは独立していますので,まだましだが,悪影響は避けられない。

 でも,民主党もどうして出たがりやの無能教授などをかつぎ出したのか不明である。そこが候補者選びを分かっていないところだ。アホな府民を騙せるような芸人でも捜すほうがよかったと思うが,如何?

追記:2008年12月28日
 以上の文は,2月始めに書いたものであるが,約1年経った現在,橋下のこれまでの言動から,危惧していた通りの状況になった。今後も石原より長生きする分,大阪府や日本をダメにする度合が高いであろう。


2008年12月28日 想定内の経済危機

 私は今年の“言いたい放題”を身辺の多忙のため大幅にさぼってしまった。あまつさえ,9月から数回の胆石による胆嚢炎で発熱し緊急入院し,沈静時に行った胆嚢切除手術などで,12月下旬にようやく時間がとれる状況と相なった。あまり想定内の事件では無かったが,年齢のことを考えると想定しておくべきことだったかもしれない。
 幸い入院時の精密検査で,食道・胃・十二指腸・膵臓・肝臓には癌の影は見つからなかった。今後も癌が手遅れになって犬死することだけは避けたい。

 今年の後半期以降,世界は100年来というか未曽有の経済危機に直面していると,マスコミは唱えているし,バカの一つ覚えの麻生総理は“政局より政治”と総理の座にしがみ付いている

 ところで本当に日本は100年に一度の危機状態なのか?識者は1929年の世界恐慌以来だと指摘するが,それが原因になった1940年代の日本の状況を記憶している人は,すでに70代以上の年齢になってしまっているが,まだ記憶に残っていると思う。今は1940年代と比べて何が危機なのであろうか?
 もちろん総選挙を経ない総理大臣が3人も出るという事態は,戦前の翼賛政党時代と比べても十分異常であり,政治の危機のほうがよほど大きいと思われる。

 私は終戦時にわずか3歳半であったので,記憶は定かでないが,1948年に小学校に上がるまでの生活苦は記憶に残っている。猫の額ほどの庭に植えたサツマイモの蔓やトウモロコシの茎までも食した。農地解放でにわかに有利になった農民は,高値で食料を都市住民に売りつけた。私もこの忌まわしい買い出しに付いて行ったことがある。母の嫁入り道具を担いで行って,僅かな統制外(米穀の売買はすべて国家統制下にあった)の食料やヤミと言われる統制物資を物々交換して帰ってきた。
 この生活状況と比べて,今の日本のどこが危機なのであろうか?派遣社員がホームレスになったり犯罪に走る例が起きているが,それこそ政治の問題,すなわち所得再配分の問題である。
 倒産したLehman Brothersの日本法人の営業社員の平均年収は4,000万円を越えていたという。おかしくなったGMなど米自動車企業のCEOの年俸もすさまじい額である。実力と人気商売のイチローや松坂の収入とは原理が違い,お手盛りなのである。

 小泉改革は,金持ちや機会に恵まれた人は好きに金儲けをした贅沢に暮らし,貧乏人や運が悪い人はのたれ死ね,という米国流の国家運営を日本に導入しようという考えであった。時流に乗っかった石原や橋下も基本的には同じ方向である。
 その結果は,米国発のbubble崩壊である。もちろん日本よりも米国流に乗っかった中国も打撃は大きいだろうが,1960年前後の毛澤東による意図的な大混乱にくらべれば,へのカッパであろう。すなわち想定内の打撃でしかない。
 今後日本経済がどこまで転げ落ちるか判らないが,少なくとも戦前の軍部に鼻面を引き回されたような政策を採用しないかぎり,1940年代の状況の再現はないであろう。その意味では日本も想定内の経済危機と言えよう。

 この後,教育と技術の力で地道に回復した国が,21世紀の花形国家になることは間違いない。しかし,1990年代から醸し出されて,小泉が醗酵させた日本の改革は,教育という一点を取ると米国流とはほど遠い状況にどんどんと変わっている。日本を再起させる力はもう産れないかもしれない。


2008年版完