いろいろなdigital/論理回路本の誉め殺し2006年2月3日更新
このsiteで紹介したICの製造法・Digital回路・論理回路・論理数学・HDLの本の中で,いくつかの本については書店に出向かなくてもおおよそのことがわかるように,実際に内容を読んでこのpageに概要を掲載してあります。
誉める本の数は,本を読む速度との関連から順次増やしていく予定です。
以下の内容は次に記した条件で作成してあります。
1. | 図書は入手時の情報に基づく |
2. | 学歴・職歴は奥付に書かれているものを転記,図書の入手時点のもの |
3. | 卒業大学・勤務大学等の名称は略記,学部名は省略,卒業は大学名のみ |
4. | 博士号は,旧名称は工学博士を工博,新名称は博士(工学)を博(工)とし,博士過程修了者で学位未取得は別記しない |
5. | 博士過程前期修了者と修士課程卒業者は一律に修士了とする |
6. | 翻訳者は氏名と現所属のみ |
評価日 | 2001/5/16 さらに詳しい情報へ(pdf file) |
書名 | ディジタル回路設計入門 電気・電子・情報工学系テキストシリーズ15 |
著者 | 高橋 新一(1967年慶應大博士了,現慶應大理工学部教授) 豊嶋 久道(1993年慶應大博士了,現神奈川大工学部助教授) |
出版社 | 培風館,2000年12月初版(税別2,900円) |
判型等 | A5版,上製,cover付き,35字詰32行, 前付・目次:10頁,本文・索引・奥付:182頁 |
評価日 | 2006/1/15 この本の著者からの問い合わせとその返信は下記に |
書名 | コンピュータ理解のための論理回路入門 |
著者 | 村上 国男(1964年茨城大卒,1995年没) 石川 勉(1970年電通大卒,現拓殖大工学部教授) |
出版社 | 共立出版,1996年初版(1999年第2刷) |
質問: 「あなたに代わって本の立ち読み」の「Digital(論理)回路技術の参考図書紹介」を読ませていただきました。この中で、「コンピュータ理解のための論理回路入門(共立出版)」に対するコメントにおいて「Flipflop の説明には問題点もある」と書かれていますが、どの部(本の何ページ)の説明でしょうか?すぐに訂正したいと思いますので具体的にお教え戴けたら幸いです。不躾なお願いで失礼とは存じますが何卒よろしくお願い致します。(2006/1/14)
回答: 「問題点がある」ではないことにご注意ください。
Flipflopの説明が,私が学生に講義したり,私の本やHPに掲載してあるものと違っていて,一般に産業界でflipflopに対して持っている理解やimageと微妙にずれているので,こう書きました。
本の記述では,flipflopはracingを避けるためにmaster-slave構成などをしている,となっていますが,この説明の順序が非常にわかりづらい上に,D-latch(RST-FF)とD-FFが混同されやすい記述になっています。
説明のためとはいえ,図 6.7の「同期型」,図6.9,図6.11の「Dフリップフロップ」,図
6.12などを先に示されては,理解がこんがらがる原因になりますので,「問題点も」と記述しました。
Race freeのために導入された構成が,以下のD-FFやT-FFの記述ではどう使われるのかということがp106の記述では「〜構成として利用されることが多い。」と明確ではありません。「〜構成として始めて実用的に使える。」位でないかと思います。
さらにrace問題を論じなくてもよいD-Latchとの区別が明確ではない部分が多く,読者としては理解しづらいところです。
正直に申しまして,現在ご本にあるような回路でcomputerや大規模なdigital回路を作成することは滅多にないでしょう。
すべてをD-flipflopで記述します。というより,compilerが自動的にmaster-slave型のD-flipflopを吐き出します。
もっともこのD-flipflopのみを使ってすべて同期式で回路を作成するやりかたは,1964年に小生が電子技術総合研究所で大型機の開発研究に従事したときから変っていません。それ以前も同じだったようです。
お育てになる学生さんの将来を考えて,flipflopの記述を簡素化して,その意味をもっと明確に伝える方向に改訂いただけると,とてもよい図書になると感じました。(2006/1/15)