Dr. YIKAIの言いたい放題「日本の世相と中国関係」

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2006年1月6日 拉致犯人と宥和政策
2006年2月4日 男尊女卑
2006年4月5日 偽金造り
2006年7月30日 昭和天皇のつぶやき
2006年9月6日 日本女性の人権改善は遠のいた
2006年11月30日 安全技術の凋落

2006年1月6日 拉致犯人と宥和政策

 1937年英国の首相となったChamberlainは領土的野心を燃やすHitlerに対し,宥和政策で戦争を避け,その間に自国の軍事的対抗力を高めようとした。
 この政策はHitlerが次々と約束違反を犯して,中部Europeの国々を併呑したことで,世界史上有名な愚策として知られるようになった。当時の英国の国内事情ではHitlerに対抗するには準備不足であったことは否めない。ただ,第一次世界大戦前までの大英帝国の夢から覚めていなかった英国は,世界の国々を連携させてHitlerに対抗しようという戦略を採用するには躊躇した。単に三国協商の延長で物事を処理しようと考え,宥和政策に走ったのであった。
 当時すでにAsiaでは日本軍部の独走が始まっており,武力的背景がない口先だけの交渉ごとでは世界の秩序を保つことは不可能になっていた。早期に米国の力を利用し,力でHitlerや日本軍部を抑えるべきであったかもしれない。

 さて,目を現在に転じてみると,小粒のHitlerは北朝鮮に厳として存在している。この国は軍事力が不足しているため拉致や偽札(註1)および麻薬・覚醒剤などの手法で対外侵略を試みている,有名無実な共産主義の幻想を国家の主義として標榜している国である。
 Hitlerを輩出した国家社会主義Deutsche労働者党(蔑称:Nazis)は共産主義的な変な看板を掲げていたが,有名な国会議事堂放火事件では共産党国会議員を逮捕してしまった。もちろん,北朝鮮や多頭型の独裁体制を敷く中国にもまともな共産主義者はすでに存在していないと考えるのが正解だろう。

 ところで,1977年にたった13歳の横田めぐみさんを北朝鮮に拉致した実行犯は,元在日の辛光洙だったと,本人の口から曽我ひとみさんに直接伝えられていたことが,去る1月5日に明らかになった。
 この恥ずべき共産主義者(=北朝鮮王朝の支持者)は戦後日本から韓国に渡り,朝鮮戦争のときに北朝鮮側に転じた。北朝鮮では日本語ができ,日本の事情にも通じているので,70年代に金正日が裏工作を始めるや否や,スパイ工作や拉致などの破壊工作に従事し,日本に多大な被害をもたらした。
 運良く韓国の公安当局が1985年にスパイとして辛光洙を逮捕でき,死刑判決まで出たにもかかわらず,自分の対北朝鮮政策の実績を誇示したかった当時の韓国大統領金大中によって,2000年に北朝鮮に送還された。

 これは金大統領のまったく何の役にも立たない宥和政策(=太陽政策)の結末である。まさに金大中は掌中の切り札をむざむざと無償で相手に渡してしまった英国のChamberlain首相以下の愚挙を行ったと言えよう。
 宥和政策の結果北朝鮮に戻った辛光洙は,金正日によって(拉致の)英雄として処遇されている。韓国は自国だけではなく日本における犯罪人も,安易な宥和政策で自由に野に放ってしまったのだ。

 いま中国が日本に対していろいろと領土的野心や権益を主張しているが,従来の対中政策的な宥和政策は,すでに「日本は脅かせば何でも出す。畑の土を掘るよりも簡単。」と考えている中国に対しては無意味である。
 北京−上海間の高速鉄道に独SiemensのICEが決まったことは,まことに結構なことである。日本の新幹線技術のタダ取りを狙った,執拗な宣伝工作には呆れたが,日本の官民一体となった売り込み体制にもあきれて物が言えなかった

 では,靖国参拝で中国や韓国の気持ちを逆撫でするのが,確固たる姿勢かと言えば,それも単なる虚勢で,何ら実効を伴わない愚策でしかない。韓国や中国の協力なしに北朝鮮とやり合うだけの軍事力も気概もない日本では,北朝鮮に舐められて,拉致の続行は無理としても,偽札や麻薬・覚醒剤の攻撃からは逃れられない。

 宥和政策はだめだが,戦略眼なき強行政策はもっと無意味である。日本は何としても台湾や韓国,Philippineを自国並みの状態に取り込んで,東Asia圏の覇権を狙う中国を正面から牽制する展望が必要である。中国とは共存,北朝鮮は中国に吸収がいちばん安定する状況だと思う。
 事実,歴史的にも朝鮮半島北部は中国の一部であった状態が多かった。さらに,中国東北部には200万人もの朝鮮族が住んでいる。東独を統一した後のDeucheを見れば,北朝鮮と統一を図るなどという韓国の政策は,如何に前途多難かが判る。

 米国とその文化しか見ていない小泉と竹中では,伝統ある日本文化も理解できていない。小泉は,ここ100年ほどで非常に政治的に振る舞ってきた新興神社に過ぎない靖国神社にこだわっている。竹中は,米国べったりの姿勢を改めないと戦略眼を持てない。
 当然ながら,Asiaをどうするかは,外務省の腰抜け官僚に丸投げなのである。

註1:
 北朝鮮が作っている偽札は,主にUS$100札や日本の1万円札であるが,米国の監視が厳しいことと,日本円は作る手間がたいへんなことで,最近は人民元の100元にも力が移っているようである。中国原産の偽札と競合ということになると,国家機関が作っている北朝鮮製のほうがはるかに精巧だろう。
 人民元なら長い国境線を越えればすぐ使えるし,人民元の力が増大したため容易に正規のUS$にlaunderingできる。大陸中国における偽札の氾濫は,日本では想像もできないくらい大規模である。旅行者は紙幣checkerを通した両替商から人民元を入手すべきである。
 ところが,100元札だけでなく10,20,50元といった市場で流通している小額紙幣にも大量の偽札が出まわっていて,運悪くこれをお釣りで掴まされたら,本来はババ抜きに回すのだが,中国語があまり出来な人は,記念に取って置いたほうがよい。

追加(2006年1月9日)
 韓国で逮捕されて死刑判決を受けたにも拘らず,太陽政策で北へ帰った拉致実行犯の辛光洙等北朝鮮の秘密工作員達は,つい先日,何と韓国に対して人権を侵害されたとの理由で,数10億US$の損害賠償を要求したそうである。「盗人猛々しい」とはこのことだが,逆切れの見本のようなこの行動は,金大中や盧武鉉大統領の宥和政策を逆手に取っただけである。
 これで,北朝鮮がまさにHitlerと同じ原理で動いていることがわかる。靖国で対中・対韓で強硬な小泉が,北朝鮮に強気に出ない理由は,北朝鮮賠償での利権の見返りを韓国の政権と同様に欲しいからだと疑われても仕方がない。小泉の頭は宥和政策ではないと考えていても,小泉は事実上の宥和政策を行っていることに変わりはない。


2006年2月4日 男尊女卑

 今日は立春であるが,例年よりひどい寒波に襲われているこの2ヶ月間でも最大の寒波で,関東地方はおろか伊豆の島々まで氷点下に下がってしまった。
 この寒さに呼応するかのように,麻生外務大臣と谷垣財務大臣が皇室典範の改訂に慎重論を表明した。麻生に至っては,「まだ男子が産れないと決まった訳ではない。」と,皇太子妃達がまるで子供を産むために存在する道具であるかのような不敬極まる発言をした。

 小泉総理は皇室の存続を第一に考え,現時点で唯一可能な解決策として,女系女性天皇の即位も已む無し,という政策を打ち出した。A級戦犯が合祀された状態の靖国神社に,天皇陛下が参拝できないような不敬な状態に置いたままで,皇室の存続を画策するとは,自己矛盾も甚だしい。
 小泉の過去の言動からして,頭の芯まで男尊女卑の考えに侵されているように見受けられる。これは,小泉が女性天皇に拝謁する機会は当分来ないという認識で,皇室の存続を小泉なりに真剣に考えた結果であろう。

 女性天皇を排除する論理は,ほとんど根拠を有しない憲法違反の男尊女卑の思考法に基礎を置く。万世一系という日本を敗戦国家に導いた軍国思想もこのくだらない思考法の一種である。土台彼らの言う皇紀元年(紀元前660年)には,日本人は後に熊襲や蝦夷と蔑まれた先住の縄文人が主力であった。
 後漢書に,「建武中元二年(西暦57年)倭奴国奉貢朝賀使人自称大夫倭国之極南界也光武賜以印綬」という記録が残ることから見ても,皇紀元年が男尊女卑の万世一系の起点とは言えない
 むしろ,三国時代の魏志東夷伝倭人の項に記されているように,女帝が存在していたと見るのが正しい

 では,なぜ一部の有力女性議員を含んで多くの自民党の議員達は,女性天皇や夫婦別姓に反対するのであろうか。
 清朝時代の有名な悲恋小説「紅樓夢」の文中に,「女児是水作的骨肉」という字句が出てくる。すなわち,女性は若い内は「天真爛漫」で「貴珍的珠子」だったのが,結婚し男性優位社会の風に晒されると,「死珠子」に変り,遂には「魚眼睛(目玉)」と化してしまう,と主人公の口を借りて作者の曹雪芹は嘆いている。

 女性の解放と地位向上に反対する一部の女性議員や女性学者は,この濁った「魚眼睛」になっていて,世の中を男社会にして置きたい支配層にいる男の論理の代弁者に成り下がってしまっている。

 多くの自民党員を始めとする戦前の日本の形に戻したい連中は,当然ながら女性天皇に反対するだけでなく,男女別姓にも反対する。
 ところで男女同姓という習慣が法律で強制されたのは,明治に入ってからだと思われる。それまでは女性の地位は低かったので,姓すら名乗る必要がなかった。
 もっとも姓を必要としなかったのは,公家・武士以外の多くの庶民とて同じであった。上位階層に属していた女性も,もし必要なら誰某の妻か何処から嫁いで来た何某の娘かを名乗ればよかった

 もっとも天皇家には現在の民法的な姓はない。皇族を離れるときに姓を賜るのである。現実的にはこれでは困るので,直系の皇族以外は宮家という一種の姓を名乗ってはいる。

 さて,天皇家の存続を目指した小泉の現実路線に反対する連中は,どのような代替案を持っているのであろうか,麻生のように人間を雌豚のように考えている例は別として,「女なんかに頭が下げられるか。」という感情論以外に具体的な方策を持っていないと思われる。
 彼らは,今皇位継承順位に名を連ねている宮家に男子が生まれるのを待つか,臣籍降下した元宮家から養子をとるとかして,男子に継がせて男性優位の社会を継続したいと願っている,としか考えられない。

 現宮家では,皇太子家と秋篠宮家だけが男子を得る可能性をわずかながら残している。多分自民党の反対派は秋篠宮の紀子妃殿下に男子を望んでいるのであろう。
 妃殿下に高齢出産を強い,自分達が好む家庭を作るのを邪魔する権利は,誰にもない。反対派の考え方は,まるで江戸時代の跡取り騒動の悪家老と同じである。

 日本の天皇家は,政治・軍事や経済以外の学術・文化や平和などの面で日本を代表する顔である。数歳のときからそれにふさわしい教育がなされなければならない。
 その場になってから,現行皇室典範の第九条の「天皇及び皇族は,養子をすることができない。 」に反して養子などという単純な発想では,対外的に恥をかく可能性も無視できない。

 男尊女卑の考えがまだ残る大陸中国の農村部では,男子を望むあまり,堕胎がまかり通り,すでに全中国で男女比が1.2:1の状態にまでなっている。この数字は男性の極度の結婚難を引き起こす値である。
 すでに旧満州の地域では数少ない女性がよりよい生活を求めて,年間1万人ほど結婚相手がいない日本人と結婚して日本に来ている。Googleで検索するとその手の商売がどんどんと引っ掛かる。その代償としてか,北朝鮮から脱北した朝鮮人の少女が農家に買われて,性と労働の奴隷として使われている。
 旧満州にいる脱北者の母親の中には,売るために女児を持ちたがるともいう。歴史に悪名高い「童養[女息]」であり,男尊女卑の考えが生み出す社会現象である。
 また,まさかわが国の女性天皇反対派が,日本が旧満州と同じ男尊女卑状態になるのを望んでいるとは思いたくない。


2006年4月5日 偽金造り(2006年5月9日 誤字訂正)

 米国は昨日(4日)米dollerを印刷するのに使っている特殊inkを北朝鮮が購入していると議会で証言した。このinkは1 pound当り$800〜$900もする高価なものだそうで,紙幣印刷以外に北朝鮮が使う理由がなく,かつ北朝鮮製の紙幣はそのような高品質ではない。
 このこと自体はすでにわかっていたことであるが,米国政府が正式に認めたということである。米国は北朝鮮が偽札を組織的に製造している証拠を握っている,と言われている。

 米国はすでに北朝鮮が偽札をlaundaringするのを阻止するために,昨年9月からMacaoにあるBanco Delta Asia(匯業銀行 BDA)と米国企業との取り引きを禁止している。この銀行は金王朝の金庫番の役割をしており,北朝鮮は年間$1,500万〜$2,500万とも言われる偽札を世界にたれ流してきており,麻薬・覚醒剤の密輸や拉致と並ぶ北朝鮮国外での三大犯罪の一つとなっている。
 この制裁措置は,日本が北朝鮮からの輸入に対して種々の障壁を設けたことよりも,直接的に北朝鮮に打撃を与えた。日本の規制などは,獲れもしない中国産のアサリに化けて輸入されるだけで,尻抜けである。
 米国はすでに$4,500万の偽札を取り締まったとしているが,中国など伝統的に偽札が横行している国を経由して世界に出回っている額は,摘発された額の数倍にも及ぶとされている。米国は,これは単なる犯罪行為で六ヶ国協議や米朝協議の対象にすらならない,との立場を表明している。

 北朝鮮の言い分は,米金融systemを北朝鮮が利用するこをを許容,偽造紙幣鑑識技術の対北朝鮮提供などを主張しており,より精密な偽札製造とその配布のための手段を要求している。
 さらにお笑いなのは,米国は北朝鮮内での米国credit cardの使用を認めていないため,北朝鮮を訪問する米外交官はたくさんの現金を持ってくるので,これにより偽造紙幣が北朝鮮に流入した可能性もある,と主張していることである。盗人猛々しいという言葉は北朝鮮のためにある。

 これに対し,宥和政策を採る韓国の盧武鉉大統領は,米国に制裁措置の緩和を呼びかけたり,六ヶ国協議での議題に取り上げる提案をする,という鈍さである。
 もちろんこれは,盧大統領とその与党が対北朝鮮外交で得点を上げたい,という妄想に駆られている結果であるが,多くの韓国国民は北朝鮮の異常性を甘く見ており,同じ民族だからという無意味は同情感で,盧大統領の政策と与党を支持している。

 中国もようやく重い腰を上げ,この3月に偽札の取り締まりに手をつけることになった。そこでは明言されていないが,人民元の偽札の製造に関しても北朝鮮の関りが疑われたからであろう。
 中国では偽100元札だけではなく小額紙幣に至るまで偽札が横行しており,大きな商店やhotelでは受取った紙幣を目視だけでなくcheckerに通すのが常識となっている。ちなみに。広東省では昨年(2005年)1年間で5億2,000万元の偽札が摘発されたという。北朝鮮の米doller生産量をはるかに上まわる規模である。
 広東省だけでなく全中国でのmoney lauderingは年間3,000億〜4,000億元にのぼると推定されている。日本の東京三菱UFJ銀行の広東省にある支店も,money launderingに関与した疑いを中国当局に掛けられ,2005年に120万元の罰金を支払わされた。
 最近は,手数料の負担を嫌がっていたcredit cardによる決済も,偽札被害を怖れる中国の大商店やhotelでは,以前のように歓迎されないということはなくなった。

 偽札については日本人や日銀の反応の鈍さも問題である。暴力団や素人がinkjet printerで作った偽1万円札は時折見つかってnewsになるが,中国のような紙幣検査機が行き渡っていない日本では,このsuper note(C14342)水準の偽札がばら撒かれても,日銀に還流するまで判明しないかもしれない。
 米国からの北朝鮮の偽札造りにに対する説明に対しても,日本は特殊な紙を使っているから大丈夫,というどうしようもない反応だった。銀行や日銀で偽札が発見されても間に合わないのである。銀行に還流しないまま流通している分に,すでに意外と多額の北朝鮮製の偽1万円札があるかもしれない,という事実を認識すべきである。
 偽札はババ抜きである。中国では偽札と分かったらすばやく人に渡してしまうのが賢いとされている。個人levelではこれ以外の防御策はない。


2006年7月30日 昭和天皇のつぶやき

 昭和天皇に長らく宮内庁長官として仕えた富田氏の陛下との言葉のやりとりのメモが日経新聞から公になった。
 これによると,昭和天皇は靖国神社へのA級戦犯の合祀を批判し,当時の松平宮司は平和を強く願っていた松平の父親の心を知らない,と詰った上で,それ以来靖国神社には参拝していないとお話しになった,と写真で公開された原文は伝えている。

 この昭和天皇の遺言とも言うべきご発言の公開で,靖国神社参拝を強行して来た小泉や安倍は窮地に立たされた。そして小泉は不敬極まりない「心の問題ですから。」という意味不明な発言を繰り返した。
 反動的な発言を漫画によって広めている小林よしのりは「わしは天皇制は支持するけど,天皇を個人崇拝はせん。」という不敬の極致の論を無理無理展開している。その他反動的な言論界の論客で婦人の地位向上にも反対する上坂冬子や櫻井よしこなどは,昭和天皇の意志を意図的に無視する発言を繰り返している。

 これらの人物らは,なぜ昭和天皇のお気持ちまで無視してA級戦犯を崇めるための靖国参拝にこだわるのであろう。それは,中国侵略以来の第二次世界大戦を肯定したいがためである。すなわちA級戦犯は悪くなかった,聖戦を遂行した英霊である,という空虚な論理を肯定するために小泉などは靖国神社に参拝しているのだ。
 そこには過去の軍国日本が(周辺国に対してだけでなく自国民に対しても)犯した罪を一切認めずに,経済力だけで世界を押し渡ろうという意識が反映している。しかし,この経済力ははたして無為無策の彼らの貢献だけで付いたものであろうか?戦争の痛手から立ち直るために平和主義を徹底してきた背景が大いに役立ったのではなかろうか。

 私はこれら不敬人間とは全く反対に,天皇制の無理やりな存続には賛成しないが,昭和からの二代の天皇陛下は人間として尊敬している。歴代の総理や産業界や公務員が多くの不祥事を平気でやっていて,その人間性を疑わざるを得ないことに比べると,英国の皇太子よりもずっと人間として立派な方だと思えるがどうであろう。陛下は日本人が目指すべき人間像の一つとして十分に世界に誇れると思う。
 いずれにしても不敬人間どもこそ天皇を政治的に利用して,自分達だけの利権を手にしてきた連中の代表的存在やその代弁者であることは間違いない。彼らが望んでいることは何であろうか,将来の日本の繁栄ではなく自分たちだけの北朝鮮型の繁栄といっても過言ではない。

 不敬人間達が言うように国を運営していけば,窮屈な気分に厭きた優秀な日本人は必ず海外に流出してしまう。国民の1%の優秀な人物が日本を見放すだけで国の基盤が崩れるのだ。
 すでに多くの人が知っていると思うが,韓国や台湾の電子産業が日本を脅かしている。かつて米国を凌駕した半導体産業は倒壊した。
 自動車と電子産業,高度素材は日本の代表的な輸出産業である。この産業を支えて来た人々は,私のような名もない技術者・研究者であり,靖国神社にせっせと詣でてAsia諸国との関係を悪くすることに熱中していた輩ではない
 じつは,bubble崩壊時のこの国のあまりにも切ない仕打ちに,これらを支えて来た無名の技術者・研究者は韓国や台湾の企業に招聘されて,定年前後の残りの生活保証を得ていた。当然ながら技術やknowhowは個人に付いているものであるから,Sumsongなどこれらの国の企業の技術力は飛躍的に上がり,日本の同種の企業を圧迫するようになったのだ。

 意味は違うが,先日日本経団連とトヨタの会長を辞めた奥田氏は,“外からみると好調に見える日本経済であるが,国家水準ではまったく体質が改善されていないので,このままだと日本は沈没する。”と,日経ビジネス誌でのinterviewで語った。
 これは何度も言うが,堺屋太一氏が言うところの《平成三十年――何もしなかった日本》そのものが現実的だという指摘である。奥田氏は日本への人材流入を促すべきだと主張しているが,それ以前に不遇を極めている技術者・研究者の流出を防がなくてはならないのではなかろうか。

 いままで流出がひどくなかったのは,外国語の壁というものがそれを妨げてきたからである。しかし,最近の英語教育の普及がその壁を低くしてしまった。すでに日本の優秀な人材は英語が出来るのが普通となっている。筆者のように中国語すら困らない人間もいる
 国家は結局それを構成する人々で成り立っている。しかしそれを牽引していくことが出来る人は僅かなのである。多くの人々はそれらの牽引者が敷いた路線の上を唯々諾々として走るしかないのである。線路が断崖に向かっていれば,lemmingよろしく海に飛び込むしかないのである。それに逆らうと押しつぶされるか,意に反して連れて行かれるかである。

 どうしてもその路線が気に入らない人は,当面の生活に不安はあっても線路から降りて,自分で荒野を行くしかない。今の日本はまたまた危ない線路を敷きつつある,と感じられる。1%に属する人でこれに同調できない人は,日本から逃げ出すべきかもしれない。
 より危険があるかもしれないが,選択肢があるだけましであろう。
 私は余命幾許もないので,再度滅び行くこの国の行く末を見守るか,Asiaの国にいて夕日を見るべきか,判断が付きかねている。


2006年9月6日 日本女性の人権改善は遠のいた

 今日秋篠宮妃殿下の紀子さまが帝王切開で男子を出産した。子供が生まれるのは少子化しつつある日本では好ましいことである。
 この出産は自然分娩と比し,いろいろな屁理屈を付けの一月も早い人工分娩である。すでにこの冬のご懐妊発表時から男子であることは分かっていたので,公式には男女不明としていたが,小泉が政権にある内にお世継ぎの誕生を急いだと考えられる。
 現皇太子に比べ,かなり保守的な考えを表明されている秋篠宮家の子が将来天皇になるとすると,いま戦前の日本への復帰を画策している森元総理大臣を長とするする派閥内の順送り首相にとっては,物言わぬ天皇は便利な存在となるであろう。

 今の皇太子は天皇になった際どのような考えを持つべきかについて,美智子皇后はかなり気を使って育てた形跡が伺える。一方秋篠宮はある程度宮内庁などの意向に沿う形で育てられているようだ。秋篠宮は妃殿下にも美智子皇后のような強い考えを持つ人ではなく,大人しい旧日本型の婦人を選んでいる。
 とうぜんそのような家族が育てる皇孫は,戦前指向の日本を滅亡に導こうと考えている人々にとって都合がいい人物になりそうである。

 このことでまず影響を受けそうなのは,女性天皇を睨んで展開しそうだった,男女同権の動きがこれで押さえられるということである。その最たるものが,夫婦男女別姓である。
 これは女性が社会進出したり,無理に婚姻を続けることなく生きるためには必要不可欠な要件であるが,旧態依然とした日本に戻したい人々は,女性は家庭で子育て,嫁しては夫に従え,という黴が生えた概念に凝り固まっているので,いろいろな女性差別の元凶である夫婦同姓の原則は譲ることができないのだ。

 じつは女性にとって夫婦別姓を貫く手段がある。夫婦別姓の国の男性と結婚すればよいのだ。卑近な例として,たとえば台湾や中国の男性と結婚すると,自分の姓は変らずにすむ。なぜなら,国際結婚にはそれぞれの国の法律が適用されるからである。日本人の女性を日本政府が強引に中国人の姓にはできないのだ。
 子供の姓は子供の国籍を選んだ時点で父母のどちらかの姓を名乗ることになる。なお,米国と異なり血統主義の日本では,基本的に二重国籍は認められていない。米国で産まれた子供は,自動的に一旦米国々籍が与えられ,成人後投票などの行為をするときに,不要な方の国籍を放棄する。

 女性の人権改善が望めないまま,産めよ増やせよという政策をいくら用意しても,人口の減少に歯止めをかけることは難しい。特殊合計出生率が少し上を向いたといって,喜んでいる政治家や役人がいるが,男尊女卑の社会構造を残したままでは,出生率が人口を維持する2.05にまで戻るのは望み薄であろう。
 以前にも述べたが,人口の減少は平均的な日本人の能力低下をもたらす。すなわち能力が高い女性ほど子供を生まないから,アホの子供が相対的に増えることになるのだ。

 科学技術で世界を席捲してきた日本の中枢がすでに,若者の医学部や法学部指向で弱ってきている。そこに,アホの子供が大量に工学部や理学部に進学したとしても,次世代の日本を担う科学技術者になるのは不可能であろう。
 安倍のような超保守政治家や多くの右傾化した国民が,かつて1930年代から始まった日本を倒産へと導く挽歌を奏で始めている
 日本は輸出で喰っている。輸出代金でenergyや食料を全世界から購入しているのだ。北朝鮮のように輸出するものがなくなった国家倒産は,今後20年以内にわが国の現実的な課題となるかもしれない。


2006年11月30日 安全技術の凋落

 高速バスが高速道路走行中に相次いで火災を起こしている。安価に遠方に移動できる手段として日本でも米国と同じように夜間高速道路を突っ走るバスが持て囃されている。
 しかし,その実体は100万km以上の走行をした10年以上の中古バスがかなり多く使われている。

 いくつかの火災原因の内,engineから火を噴いた例が多いとのことである。
 Engine内のpipeの振動を止めるために使われているゴム製品が,経年変化による劣化で用をなさなくなり,燃料pipe等が他の金属部品と擦れて穴が開き,そこから吹き出した軽油に火がついた例があるという。
 冷却fanのbeltなどは,運転免許試験にすら出る消耗の可能性がある部品である。金属も疲労を起こすようなengineの振動があるのであるから,整備点検は絶対的に必要なのであるが,国土交通省が決めた整備基準にはおお雑把なことしか書かれていないため,バスをどこまで整備するかということは,各バス会社の内規や整備を担当する人の力量に委ねられている。
 もちろん,ここにもcost削減の圧力は容赦なくかかって来ているので,意図的でなくても目をつぶる整備必要事項はあるかもしれない。

 幸いバス火災では人命にかかわる被害はあまり出てはいないが,飛行機では別である。以前の日本軍では,整備はすべて整備兵の能力にかかっていて,manualによる徹底整備という考えは,戦後米国から学んだ手法である。
 米国の忠実な弟子である日本は,この米国流を自家薬籠中のものとして,運輸機器だけでなく製造機器も整備してきた。これが日本の高品質商品を産み出し,現在の日本経済を支えている。

 日本では戦前と異なり軍用機でもあまり落ちなくなった。同じ米国製を使っている台湾では事態はかなり悪い。ちょっと古いdataであるが,2006年6月19日に飛行時間が6,595時間のF-5Fで,乗っていたのは2,638時間と約400時間の飛行経験があったそうである。
 台湾では最近6年間で13機,その内F-5Fは8年間で4回も落ちているようである。

 これが中国本土となると,米国がEU製の戦闘機の対中輸出に反対しているので,旧ソ連から引き継いだ自国製の戦闘機を使っている。事情は当然かなり悪くなる。
 当然ながら人工衛星の打ち上げの失敗も一切報道されない国であるから,軍用機の墜落は国防秘密に入れることで,偉い人の身分を守る構造が出来上がっている。
 しかし2006年6月3日には,中国が自主開発を進めていた40人が乗った「空警−2000」と思われる早期警戒機が安徽省東部の広徳県姚村に墜落した。搭乗者全員が死亡したのでさすがに隠しきれなくなり,新華社からnewsが流れたが,委細は不明である。

 このほか,去る4月4日には海南省で中国海軍の戦闘機が墜落して2人が死亡,2006年10月19日には河北省の衡水市の麦畑に中国軍の「運−7」が墜落し,少なくとも搭乗していた2人が死亡した。機内には5〜6人が乗っていたのではないかと言われている。

 小型機になると,航空管制を無視した飛行が多く,頻繁に事故を起こしている。2006年5月1日に,湖北省と江蘇省で軽飛行機とグライダーが相次いで墜落して2人が死亡し,4人が負傷した。
 2006年5月1日午前中に湖北省の鄂州にある良子湖を遊覧飛行していた小型機が湖に墜落している。湖面だったので死者は出なかったが,1時間後に江蘇省の宿遷市宿城区ではグライダーが墜落して,搭乗していた2人が死亡,1人が負傷した。
 これらは管制に従わなかったというよりは,むしろ操縦の未熟さや整備不良に起因する事故のようである。

 中国や台湾で事故が発生するのは,その国の問題であるから構わないが,日本国内の安全性が今後これらの国並みに下がっていくのは問題である。
 台湾軍の戦闘機がF-5Fである以上,条件は日本の自衛隊と同じであろう。問題があるとすれば,バスと同じようなことが発生する可能性があるということである。
 安全性は,気合いや信念では確保できない。科学的に根拠がある手法を使って,継続的に安全を維持してく努力を怠ると,日本製品の信用も将来損なわれるであろう。

 最後に,これは余談であるが,中国も航空会社の賠償責任限度額を2006年の3月末から一人7万元から40万元に引き上げた,とのことである。事故補償金を引き上げることで,航空会社の安全運行確保に圧力をかけることができればよいが・・・。


2006年版完