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1.4 電気の配線はどうやるか

 家の外から入ってきた電気を,コンセントや引っ掛けシーリングまで引っ張る電気配線を工事するには,日本では第2種電気工事士以上の免許が必要と,かなり厳しく規制されています。
 とは言っても,門外の人も知識として知っていると便利です。


1.4節の内容

1.3節 電気を外から家の中へ取り込む 1.5節 アースも配線する

Q1.17 ケーブルの種類   Q1.18 電線とケーブルやコード
Q1.19 電線の器具への接続 Q1.20 照明のスイッチ
Q1.21 たこ足とテーブルタップ Q1.22 電線同士の接続



Q 1.17 ケーブルの種類
 分電盤などからの配線には,どんなケーブルを使っていますか。

[A]
 単相の100V を屋内配線するとき,通常は白黒のケーブルを使います。 2芯のケーブルは,このほか白と赤で色分けしたものもあります。 しかし個人住宅内の配線は,表1.4をちゃんと守って工事してない例もかなりあるようです。

表1.4
配電用ケーブルの
芯線の色分け例
 公共建築工事標準仕様書(電気設備工事編)2010年版による

 白色の電線は,電源のアース(接地,N)側につなぎます。 アース側は,コンセントや安全ブレーカなどの電気器具にW(白)あるいはNという表記がされています。
 黒/赤色の電線は,L 側につなぎます 。間違って手で触るとビリビリします。  洗濯機など機器から出ている接地用の緑色の電線は,直接地面へ接地します。 電源のアース側(N)にはつなぎません。 そうしないと漏電の検出ができません。
 分電盤から後の屋内配線には,通常は絶縁体の耐圧600Vの低圧電力用の図1.22のような単線の電線からなるケーブルを使います。 電気工事屋などは,この断面が小判型のケーブルをFケーブルと呼ぶことがあります。

図1.22
Fケーブル
(a)2芯ケーブル (b)3芯ケーブル

 この電線は,以前はVVF(Vinylビニール insulated Vinyl sheathed Flat-type)ケーブルといわれていて,2芯または3芯の単線導体(撚り線ではなく硬い)を,塩化ポリビニルPolyvinylで導体の絶縁とケーブルのカバーCoverをしたものでした。 しかし,燃焼時にダイオキシンDioxinが発生したり,ビニルの耐熱性が問題となったので,今はVVFの代りに絶縁物を全部ポリエチレンPolyethyleneに変更したEEF(Ethylene-Ethylene-Flat)ケーブルや,内側の電線の被覆だけをポリエチレンにしたCVF(Crosslinked polyethylene insulated Vinyl sheathed Flat)ケーブルが使われています。
 太さとしては,銅線の外径が1.6mmや2.0mmの電線が使われています。 場合によっては2.6mmの電線も使います。表1.5に屋内配線用ケーブルの規格例を示します。 電線には2芯のものと3芯のものがあります。3芯のものは三相交流用だけではなく,階段の上下双方から開閉できるスイッチの配線や,洗濯機などの接地を取る配線にも使う事があります。

表1.5
屋内配電工事用 
ケーブルの例
導体直径抵抗率の例許容電流適用回線容量
1.6mm 8.92Ω/km 19A 15A以下 
2.0mm 5.65Ω/km 24A 20A以下 
2.6mm 3.35Ω/km 33A 30A以下 
 周囲温度30℃以下
 内線規定による

Q 1.18 電線とケーブルやコード
 電線とケーブル,コードCordはどう違うのですか。 また,電線やケーブルはどうやって建物に固定しますか。

[A]
 電線(Wireワイア)は単線でも撚り線でも1本ずつのものを指します。被覆がかかっていても(被覆線)あるいは裸でも(裸線),単に電線と呼びます。
 一方ケーブルは,何本かの電線をまとめてその上にさらにカバーCoverをかけたものを指します。 ケーブルは,以前の日本や中国語では電纜でんらんと呼び,その名残りは戦後も日本の電線会社名に残っていました。
 コードは,ひもを意味する英単語をケーブルの意味に使ったものです。 主に“電源コード”や“延長コード”のように,柔らかく曲げられるケーブルを指しています。 具体的にはQ1.21で説明します。
図1.23
ケーブルを固定する
 ケーブルは図1.23のように,固定用の器具で壁などに直接止めます。 Fケーブル類は,以前は工事が楽な金属に絶縁を施したステップルStapleで,壁や柱に金槌で打ちつけて止めていました。 しかしこの方法は,時には断線や漏電事故の原因となるので,現在は種々の固定用の器具でケーブルを止めます。

*   *   *
★ ハーネス

 ケーブルでも電線でも,家の中や家電機器の内部ではかなり複雑に配線されています。
 そこで,図1.24のように機器に組込む形で,電線にソケットやプラグなどの接続器具を付けて,一組にしたものをワイヤハーネスWire harnessと呼びます。
 ハーネスは対象の機器とは別に作成し,後で必要なところに組みつけます。 ですから車の中の電気配線も同じくハーネスです。
 なお,“Harness”という英単語は,もともと馬車を引く馬に付ける,ひも状の革でできた馬具のことを指しています。

図1.24
パソコンの電源線の
ハーネス

Q 1.19 電線の器具への接続
 電線は器具にはどうやってつなぎますか。

[A]
 ケーブルは基本的には,コンセントなどそれぞれの器具のところで接続します。 壁付きのコンセントや電灯の器具には,図1.25のように渡り配線のために2箇所に電線の接続点が付いています。

図1.25
電線の器具への接続

 直径1.6mmあるいは2.0mmの単線による分電配線と器具間は,ワンタッチOne Touch操作で押し込むと接続可能な方式が採用されていて,接続作業時間の短縮に役立っています。

図1.26
太い電線や
撚り線の接続

太い電線や大きな電流が流れたり電線に力がかかる可能性があるところでは,接続を確実にするために,図1.26 のように電線を座金で挟んで,ねじで押し込んだり引き上げたりすることで接続します。 大きなブレーカ(遮断器)はこの方式で接続されています。 なおり線をつなぐときは,昔ははんだ付けや眼鏡型の圧着端子を使っていましたが,単線に変換する部品を使う方式が使われ,作業が簡単化しました。

Q 1.20 照明のスイッチ
 天井に付けてある明りを点滅するスイッチはどう接続されていますか。

[A]

 (a)通常の電灯のスイッチ  (b)階段の上下双方で点滅する
図1.27 電灯のスイッチの接続

 照明の点滅スイッチは,図1.27(a)のように接地されていない側の電線に入れます。 そうすればスイッチを切った状態では,照明器具を触っても感電する危険がありません。 階段の上下で勝手に点け消ししたいときは,図1.27(b)に示した三路スイッチを使います。 スイッチが同じ色の電線側に倒れているときは電灯が点き,異なる色を示すときは電灯は消えます。
 なお,三路スイッチは単極双投スイッチ(SPDT:Single Pole Double Throw)とも呼びます。

Q 1.21 たこ足とテーブルタップ
 パソコンを使おうとしたら,プリンタPrinterなどいろいろな機器があって,壁のコンセント の差込み口の数ではとうてい足りません。

[A]  コンセントから機器への電気の供給は,可能なかぎり機器付属の電源ケーブルで直接壁付きコンセントに挿して行うべきです。
 パソコンなどの情報機器は,家電機器とくらべると消費電力が少ないので,一つのコンセントの差込み口以上の機器をつないでも,通常は制限されている電流にはなりません。 そこでよく使われるのは,図1.28(a)に示す三角形や台形の俗称“たこ足”という器具です。 一口の差込み口を,二口あるいは三口に拡大できますが,ケーブルの重みで抜け易くなりますので,あまりお勧めできません。
 なお,たこ足に組み込まれた盗聴器も出回っていますので,用心してください。

 スィッチと通電表示付き
 汎用  
(a)たこ足 (b)テーブルタップ
図1.28 たこ足とテーブルタップ

 電子機器を数多く使うパソコンなどを設置するときは,図1.28(b)のようなテーブルタップTable tap(タップは水道などの蛇口という意味と,電気や信号の中間の取り出し口という意味がある)を使って,差込み口の数を拡大します。
 ほとんどのテーブルタップは,全部の差込み口の合計で10Aあるいは15Aまでの電流容量しかありません。 テーブルタップはそのケーブルやプラグの電流容量によっても,全体の電流容量が制限されます。 テーブルタップを自作するときは十分注意してください。
 情報機器用に雑音対策を施したテーブルタップもありますが,おのおのの差込み口に流せる電流は多くて5A以下なので,自作の大消費電力パソコンの本体をつなぐ際は,電源容量をよく計算する必要があります。

*   *   *
★ 曲げられるケーブル

 テーブルタップや電気機器のケーブルは,表1.6のように細い電線をたくさん束ねたり線になっています。 これらのケーブルは細い電線で作られているために,ケーブル自体を自在に曲げることができます。

表1.6
テーブルタップなどに
使う撚り線の例

 ばねのように完全に元に戻らなくても,ある程度の弾力があって曲げられることを,可とう性(Flexibilityフレキシビリティ)があるといいます。

Q 1.22 電線同士の接続
 2本以上の電線をつなぎたいときはどうすればよいのでしょうか。

[A]
 昔は,電線を撚ってはんだ上げして仕上げる必要がありましたが,便利な部品がある現在は,はんだ仕上げは非常用の方式となりました。
 コンセントまでの屋内配線には使えませんが,撚り線も図1.29(c)にあるような部品を使ってワンタッチ接続ができるようにするか,圧着端子を用いてねじ止めします。


 より線を圧着して
 単線にする
  3本接続用    2本接続用   1本接続用
 (a)ワンタッチ接続用の部品  (b)接続した電線  (c)ワンタッチ化部品
図1.29 ワンタッチで電線同士を接続

 スイッチへの配線をする際など,電線同士を空中で接続(Jointジョイント)しなければならない場合があります。 2,3本までなら図1.29(a)のようにばねの力で喰い付くワンタッチ接続式の差込型電線コネクタConnectorが使えます。 この部品は2.0mmの太さの単線まで接続可能で,より太い電線や複数本を接続するときは,圧着方式を使った分線器具を使います。

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