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2.6 冷蔵庫とエアコン


 もし冷蔵庫とエアコンがなかったら,テレビがない生活よりももっと辛いかもしれません。 現在見慣れている家電機器が何もない環境は,前世紀の半ばまではごく普通でした。 家庭の電気の契約も5Aで十分だった時代です。
 昭和の初期には,エアコンはほとんど普及していませんでした。 1952(昭和27)年8月14日付けの朝日新聞に,“いまは冷房で晝寝ひるね”というデパートの記事が載っています。 普通の事務所や一般の学校では,天井に付けた大きな羽根の扇風機で空気を循環させて,室温の上昇を防いでいれば上等でした。


2.6節の内容

2.5節 電子レンジでの加熱 2.7節 加熱で光を出す

Q2.21 冷蔵庫が冷えるりくつ   Q2.22 エアコンは外気の熱を吸収して暖房する



Q 2.21 冷蔵庫が冷えるりくつ
 冷蔵庫はどうやって冷やしているのですか。

[A]
 冷やす家電機器として最初に家庭に導入されたのは,冷房ではなく電気冷蔵庫でした。
 冷蔵庫が冷えるりくつは,運動などで筋肉などを痛めたり火傷やけどのときに,図 2.22(a)のよ うにシュッとかける冷却スプレーSprayで冷やせるのと同じです。
 スプレー缶の中にはプロパンPropaneブタンButaneなどの冷媒れいばいが入っています。 加圧されて液体になっている揮発性の液体が,ノズルNozzleから吹き出されると,周りの空気から気化熱を奪い,さらに大気圧まで膨脹ぼうちょうするためのエネルギーも吸収します。 冷却スプレーは,瞬間的に常温から−40℃くらいまで冷やすことができます。

図 2.22
冷却スプレー
と冷蔵庫
  (a)冷却スプレーで冷やす  (b)冷蔵庫では冷媒を回収使用

 冷えるりくつは簡単なのですが,冷蔵庫のように長時間冷やすには,スプレー缶とは違い,液化された揮発性ガスを連続的に供給しなくてはなりません。 そこで図 2.22(b)のように,冷却に使ったガスを回収して圧縮ポンプPunmpで再度液化します。
 ガスを圧縮すると熱が出るので,その熱をファンFanを使って空気中に放出して冷却します。 これは冷却する対象物の熱を運んで,外の空気中に放出したと考えてもよいでしょう。 圧縮ポンプは,通常は電気のモータMotorで動かしますが,自動車のクーラなどは,エンジンの回転力を直接使うこともできます。

Q 2.22 エアコンは外気の熱を吸収して暖房する
 エアコンで暖房するのはなぜ,電気ストーブよりも有利なのですか。

[A]
 電力を直接熱にするのではなく,外気の熱を吸収するヒートポンプHeat Pump式のエアコン(Air conditionerエア コンディショナ:空調)を動かす動力に使えば,小型の石油ストーブと同程度の,2.8kW(洋間8畳用)ほどの暖房用の熱を得ることは容易です。 このエアコンでの消費電力は,外気との温度差が5℃のときならほぼ1kW以下です。
 エアコンでの暖房は,電気代が石油ストーブの灯油代と拮抗きっこうしますから,どちらを使うかは条件と考え方で決まります。 ただ外気温があまりにも低いと,エアコンは暖房効率が低下しますので不利になります。
 ヒートポンプの構造は冷蔵庫と同じです。 図 2.23のように暖房用のエアコンでは,冷蔵庫の中が外気で,冷蔵庫の外が室内に相当します。

図 2.23
エアコン暖房と
冷蔵庫は内外が逆

 冷蔵庫は,すでに冷たい冷凍室などからさらに熱を吸収して,外には温かい空気を放出しています。 同じように,エアコンは外気が氷点下でも,室内を暖めることができます。 すなわち,電気は熱を汲み出すポンプを動かす動力に使われているわけです。



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