1953年まで稼働していた京都・井堤の宮本水車
一基の水車で,精米杵,石臼,ふるいが動いている
『拾遺都名所圖會』前朱雀の巻(1787年刊)p54より
動力の世界で,
古来人類は,自分が出せるエネルギー以上の仕事をするために,動物の力を借りていました。
自然条件が整っている場合は,風車や出力が安定な水車も動力として使いこなして来ました。
エネルギーを産出しなくても,車輪,
これらの過去の技術に対する優れた観察と経験があって始めて,蒸気機関やモータが有効に使われるようになったのです。
第3章の内容
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3.1 動く家電機器とモータ
現在,電気を使って人の手や足の代わりをする家電製品はいろいろとあります。
洗濯や掃除,餅つきなど,長時間の人手と労力がかかる仕事を道具や機械で行えるようにすることは,長い間の夢でした。
電気の力を動力に変えるには,通常は電気のエネルギーを回転エネルギーに変える必要があります。
動力の発生には,ほとんどの場合
現在,日本で発電された電気の半分以上は,モータの動力として消費されています。
家庭や事業所・商店では,消費電力のかなりの部分が,空調や冷蔵庫のモータ用電力です。
Q 3.1 タイマが暖かくなる
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[A]
多分,漏電ではありません。
このタイマには家庭に供給される電源で動く小さなモータが入っていて,設定した時間になるまで回るようになっています。
したがって,まだ電気炬燵の電源が入っていなくても,モータを回すために電源が入っています。
このモータの発熱でタイマが少し暖かく感じるのです。
モータ式のタイマには周波数の切り替え機能が付いています。
これは,東日本の50Hzと西日本の60Hzで,タイマの動作速度が変わってしまうのに対応するためです。
なお,東西の周波数については,Q7.16を見てください。
タイマはモータで動く家電機器としては小さな部類に属しています。
以前は掛け時計などにも家庭の電源で動くモータ式のものがありました。
これらのタイマは,電源プラグをコンセントから抜いた状態でも“ジィーッ”という音を立ててタイマが回るので,周波数切り替え機能を確かめなくても機械式であることがわかります。
電気釜や電子レンジなどのようにいろいろな設定ができ,リモコンが使える家電機器には,図 3.1(c)のような電子式タイマが付いています。
電子式タイマはパソコンと同じように電子回路で時間を測っていて,モータは使っていません。
★ ぜんまい仕掛け
モータが使われるようになるまで,自動で動くものの動力源の多くは“ぜんまい仕掛け”に使われている“ばね”(和語,漢字では発条と書く)を使いました。
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Q 3.2 モータはどうやって回る |
[A]
モータは基本的には磁石のN 極とS 極が引っ張り合う,あるいは同じ極が反発しあう力を利用して回っています。
図 3.3(a)のように手に持った磁石を回すと,回転磁石は手に持った磁石につられて回ります。
図 3.3 磁石が回る |
(a)磁石が引き合う | (b)界磁が順次反転 | (c)各部位の名称 |
手で回していてはモータは自動で回らないので,図 3.3(b)のように外側にいくつかの磁石を置き,回転する磁石に合せて外側の磁石(界磁という)のN,S を順番にひっくり返していけば,回し続けることができます。
やはり,手でひっくり返してはいられないので,外部からの力で反転させます。
このとき,引き合っている磁石の力に逆らってひっくり返すために,エネルギーが必要となります。
このエネルギーがモータの回転エネルギーに変換されます。
モータの回転する側は図 3.3(c)のように
Q 3.3 電磁石 |
[A]
界磁の向きが固定の永久磁石(PM:
すでに第1章と第2章で説明したように,図 3.4(a)のように電流が流れると,その周りに磁場ができます。
電線を図 3.4(b)のようにコイル状に巻くと,より強い磁場ができます。
図 3.4 電磁石 |
(a)直線電流の磁場 (b)コイルの磁場 (c)電磁石 |
図 3.4(c)のように鉄の芯にコイルを巻くと,さらに強力な磁石を作ることができます。
モータ用の磁石には,このような電磁石を使います。
電磁石にすると,図3.4(c)のように電流の向きを逆にするだけで,磁石のN,S 極がすぐに逆になるので,図3.3(b)のような動作が可能です。
鉄などの永久磁石によく吸い寄せられる強磁性体を磁場の中に置くと,図 3.5(a)のような結晶内部の磁区と呼ばれる小さな磁石の向きが,外部の磁場に揃えられて内部に高密度な磁力線の集まりが発生するため,効率よく電磁石を作ることができます。
図 3.5 磁性体と磁場 |
(a)強磁性体の磁区 (b)磁力線 (c)閉磁路 |
これは図 3.5(b)のように,外部にまばらに拡がっている磁力線を吸い寄せたと考えることもできます。
すなわち磁性体がその中に磁力線を集めると解釈できます。
さらに図 3.5(c)のように,コイルの内部を通った磁性体を周回させて閉磁路を作ってしまうと,外部には磁力線がほとんど漏れ出さなくなります。
Q 3.4 モータの種類 |
[A]
簡単なオモチャや家電製品のタイマは,ぜんまいを巻いて動かすものもありますが,今は自動で動くほとんどのものにはモータが付いています。
これらには,用途と大きさに応じていろいろな種類のモータが使われています。
各種のモータは大きさだけでなく,永久磁石の使用の有無や,電磁石の構造をどうするかで,回るりくつが異なります。
表 3.1はモータを構造やりくつから大きく分類したものです。電子制御なしの状態で直流で回せるモータは,整流子モータだけです。
表 3.1 モータの種類 |
出力(W)=トルク(N/m)×2π 回転速度(rpm:回転/分)÷ 60
です。
出力,トルク,回転速度の関係は,モータに限らず自動車のエンジンなどすべての回転型の動力源に共通の考えです。
★ 変速機
現在の自動車は,ほとんどがAT車すなわち自動変速車(通称“オートマ”)になり,MT車すなわち手動(
モータの場合も,負荷が必要としている回転数とモータの回転数が合わないときは,図 3.6のように歯車( |