2.4 IH調理器具での加熱
オール電化住宅の台所の切り札が,IH(
IHレンジはIH
2.4節の内容
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Q 2.12 IH レンジのりくつ |
[A]
どちらも同じようなものだと勘違いする人がいるかもしれませんが,まったく違います。図 2.11のように加熱するりくつがまったく違います。
IHレンジは“電磁”調理器という名前からも推測できるように,電磁石の仲間を利用しています。
一方電子レンジは,名前に“電子”が付いているように,加熱のりくつには電子が
図 2.11 IHレンジと電子レンジ |
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(a)IHレンジでの加熱 (b)電子レンジでの加熱 |
Q 2.13 鍋だけを加熱できるIHレンジ |
[A]
IHレンジの天板は図 2.12(a)のように,耐熱ガラスなど電気を通さない材質でできています。
図 2.12 IHレンジ |
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(a)IHレンジの上面 | (b)IH用の鍋の底 |
IHレンジに金属でできた鍋をかけてスィッチを入れると,レンジに接している鍋の底だけに電磁石が作用します。
すると図 2.12(b)のように鍋の底に
IHレンジは電磁石の構造を使っているので,通常のIHレンジに使う鍋は基本的に磁石にくっつくものが最良です。
IHレンジにはアルミや銅あるいは18-8ステンレス(材質名SUS304)など,磁石にくっつかない素材でできた鍋でも加熱できるようになっているものもあります。
これは,鍋に加える20kHz程度だった高周波磁場の周波数を,鍋の種類によって3倍にする機能を積んで,これらの材質でも表皮効果による損失が出るように改良してあるからです。
しかし,どうしても効率が低くなるので,たとえばIHレンジのメーカーではアルミや銅の鍋については次のような注意を掲げています。
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なお最近のIHレンジは,水分がなくなって
Q 2.14 誘導電流 |
[A]
IH レンジでは,図2.11(a)のようにIHレンジの上面から強力な高周波の磁場を鍋に加えます。
直流の場合でも図1.41のように,電流が流れると電流の周りに丸い磁場ができます。
この電流を電池などから得られる直流ではなく交流にすると,図 2.13(a)のように電線の周りには向きが常時変わる交番磁場が発生します。
図 2.13 電磁誘導 |
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(a)交番磁場 (b)誘導電流 |
磁場を検知するために置いた小さな磁石は,クルクルと常時向きを変えなくてはならなくなります。
小さな磁石自身の磁場は,交番電流による磁場の変化をつねに打ち消します。
小さな磁石の代わりに図 2.13(b)のように電線を置いても,新しい電線の周りの磁場の向きが常時変わり続けています。
すると図2.13(a)の電線に交番電流が流れることによってできる磁場によって,小さな磁石が回る代りを,磁石の位置に置いた電線がします。
すなわち図2.13(b)の電線に電流が上下交互に流れ,それによって発生した磁場が,小さな磁石がくるくる回る代わりに,図2.13(a)の電線の電流による磁場を打ち消すように働きます。
このような交番磁場から惹き起こされる現象を,電磁誘導といいます。
図 2.14 鍋底の誘導電流 |
図図 2.14のように鍋の底も,輪になった電線をたくさん平らに並べたと考えれば,同じように電磁誘導によって誘導電流が流れます。
この電流は鍋の底を通り抜ける磁力線の変化が
Q 2.15 コイル |
[A]
磁場を効率良く発生させるには,図 2.15のように電線をぐるぐると巻いて
図 2.15 コイル |
すると巻いた各電線が作る磁場は,電線が隣合わせになる部分では向きが逆になり,互いに打ち消しますが,全体では向きが同じになるので,各巻き線の磁場が足し合わされることになり,より強力な磁場を作ることができます。
このコイルに交流を流すと,直線状の電線より強力な電磁誘導を起こせます。
★ 高周波誘導加熱
IH方式を鍋ではなく産業用に応用したものに,高周波誘導加熱があります。 図 2.16(a)のように,金属を空芯のコイルの内部に置いて,コイルに数十k〜数MHzの高周波電流を流すと,IHレンジと同じように,コイルの内部に置いた金属を加熱できます。
IH方式の加熱のりくつは渦電流ですが,高周波加熱も図2.16(b)のように,金属の表面から加熱(表皮効果)されます。
他の加熱方式に比べて装置の値段が高いことを除けば,温度上昇する部位が限られるなど操作性がよいので,細かい加熱作業に向いています。 |