5.3 乾電池からは直流が出てくる
じつは多くの電気機器は直流で動作します。
直流(DC:
元々電池は,時計など電力消費が非常に少ない機器や,電力消費が小さくて移動して使用する機器に用いられてきました。
室内でエンジンの排ガスを好まないが移動して使う機器や車椅子・自転車・自動車,非原子力駆動の潜水艦などでは,蓄電池が大きな動力源として使われています。
5.3節の内容
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Q 5.8 乾電池の構造 |
[A]
図 5.5 乾電池の構造 |
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(a)マンガン電池 (b)アルカリ電池 |
電気化学反応を利用する電池は,基本的には図 5.5のように,酸化剤でできた正極(陽極ともいう)と,消耗する金属(亜鉛)の負極(陰極ともいう)および電解液から成っています。
電池としての動作のりくつはかなり複雑です。 化学式を見ると頭が痛くなりますが,以下のようにして電気が取り出せるといわれています。
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Q 5.9 乾電池の種類 |
[A]
種類は大きさと性能で分けられます。
懐中電灯などに使う円筒型の乾電池は,使い捨てなので,世界中どこで買っても大きさに互換性がないと困ります。
IEC(International Electrotechnical Commission : 国際電気標準会議)規格では表 5.2のように寸法が決まっています。
通称角型(積層型とも呼ばれる)乾電池といわれている電圧が9Vの電池は,内部に6個の1.5Vの電池セルが直列に積層されています。
これに対して1.5Vの電池は,電池セルが一つなので“単〜”という呼び方がされています。
表 5.2 円筒型乾電池の大きさ(φは直径,Hは高さ) | |
単5 単4 単3 単1 単2 006P | |
日立マクセルHPより(現在リンク不能) |
カメラ用に作られた
なお,4LR44はアルカリ電池のLR44を4セル入れて封をしただけの円筒型電池です。
表 5.3 カメラ用乾電池の 大きさ |
φは直径 |
丸くて薄い形状の
表 5.4 主なボタン電池 の大きさ
LR:アルカリ |
電池の性能は,第一にはその
マンガン電池自体も材料や構造の改良で,表 5.5に示すようにまず赤容器(高出力),そうして黒容器(超高出力)へと変り,第二次世界大戦後すぐのころは,単一型でわずか1Ahしかなかった容量は,最近では約3倍に伸びました。
表 5.5 乾電池の構造と性能 |
電池の容量は,実用に耐えなくなった時までの電流の積算量です。 通常は端子電圧が0.9Vまで低下したら打切り電圧として,そこまでの積算量を容量と考えます。 電球方式の懐中電灯以外の電子機器では,内部の電圧を一定に保つために電子回路で昇圧していますので,電池の端子電圧が下がるほど消費電流が増えます。 そのような状態では急速に消耗します。
表 5.6 単一型アルカリ電池の 放電電流による 容量変化例 |
パナソニック2009年 発表のグラフからの 読取り値 |
なお,電池の容量は使い方で大きく変り,表 5.6に示すように大電流(単一型で1A程度)で使うと,その1/10程度の中電流で使う場合と比べ,容量が半分程度に下がってしまうことがわかります。 また,間歇使用するとマンガン電池は回復して長持ちすることが知られています。
Q 5.10 乾電池の残量を調べる |
[A]
いちばん簡単で解りやすいのは,豆電球式の懐中電灯に入れて点けてみて明るさを比べることです。
ただ,多くの懐中電灯では乾電池が二つないと調べることができません。
図 5.6のような電池残量の
図 5.6 電池チェッカ |
旭電機化成HPより ADC-07型(乾電池のみ可) |
打切り電圧になったかどうかを正確に調べるには,Q7.26で説明する電圧計をつかいます。 この時は実際の使用状態に近付けるために,電池に負荷をつないだ状態で測る方が正確です。